▼ 今しかない!3
ビクっと固まるユヅキ。
「エリちゃん?どしたの?」
震える声で聞かれて後ろからユヅキの髪に顔を埋める。
「告られたんでしょ?信五に…」
「…知ってたんだ…」
「今日健ちゃんに聞いた」
「…そう。付き合ってくれない?って…言われたよ」
小さくでも、しっかりとそう言うユヅキ。
悔しいのか悲しいのか、心がかき乱される。
ギュっとユヅキを抱く腕に力を込めて俺は言葉を続けた。
「断ったの?それとも、OKしたの?」
関係ないって言われても引き下がれない。
でもユヅキはそんな言葉を言うつもりはなかったみたいで。
「付き合っていくうちに好きになってくれればいいって。前向きに考えてほしいって…言われたよ」
自分を棚に上げて何だか腹ただしかった。
付き合っていくうちに好きになてくれればなんて言い訳だ。
好きだから付き合うんだって…
「断れよ」
ボソっと一言呟くとユヅキが「え?」小さく言う。
俺は腕の中に閉じ込めていたユヅキをその場で回転させて正面から向き合う。
後ろにあるドアにユヅキの背中がトンっとつく。
掴んでいた手首。
両手首を掴み直してユヅキの顔の横に手をついた。
俺に手首を拘束されて身動きの取れないユヅキだけど、そんな俺に対して真っ直ぐな視線を向ける。
「好きな奴と付き合えよ…。そんな付き合ってくうちに好きになるだなんておかしい。好きでもない奴にキスもそれ以上もされたらどうすんの?」
言ってる俺こそ、ユヅキの唇に近い距離で話しているなんて。
矛盾してるのに、止められない。
こんなになって初めて気づいたんだ―――強烈にユヅキのことが好きだって。