▼ 今しかない!2
「あ、お帰り!」
テスト期間中の俺達。
部活が唯一休みになるこの時期。
ユヅキの部屋に先回りして待っていた。
「エリー!なにしてんの?」
部屋に入るなり制服の上着を脱いでハンガーにかけたユヅキはベッドの上で漫画を読んでいた俺にニコっと微笑んだ。
「うん、顔見にきた」
「…え?顔?」
「うん。最近部活ばっかでユヅキの顔ちゃんと見てなかったから…」
「…そっか!へへへ、どう?可愛い?」
ほんの一瞬照れながらも、指で頬っぺたを突き刺して首を傾げるユヅキにドキっと心臓が高鳴る。
あーやべぇなその顔…。
男心くすぐる…
その顔、独り占めしたいんだけど…
ひとり、悶々とする心を隠してユヅキの頭をフワっと撫でた。
「めちゃくちゃ可愛い!」
「…ありがと!久しぶりに聞いた、エリーの可愛い。何か照れる」
海外の血が半分入ってる俺は愛とか情とかに人より熱いのは分かっている。
好きだなって思ったら好きだって言うし、可愛いと思ったら可愛いって言う…
だからユヅキにだって何度となく「可愛い」って言い続けてきた。
でもたった一言「好き」って言葉がいつからか言えなくなっていて。
それが恋だと気付いた時にはきっと「愛」になっていたんじゃないかって。
「照れる」と言って恥ずかしそうに俺の隣から立ち上がって「アイス食べる?」部屋を出て行こうとするユヅキ。
俺はそんなユヅキを引き止めるように後ろから手首を掴んでそのままギュっと腕の中に抱きしめた―――