SHORT U | ナノ

 ピンク色の猫2

「ほら、ナイトのお出ましだ」



ユヅキさんの髪をふわりと撫でたエリーが彼女を俺に差し出した。

なんか、お見通し?

俺エリーとユヅキさんの話したこと1度もないのに。

俺を見て優しく微笑む紳士なエリーに軽く押されてユヅキさんが俺の所にフワリと乗っかった。

ムスっとした顔で俺を見つめるユヅキさんの頬は酒のせいでかほんのりピンク色で。



「俺のこと好きなんじゃないの?」



意地悪くそう聞いたんだ。

だってあの日確かにこの人は俺のこと好きだって、彼女にして!って言ってきた。

それなのに翌日以降、俺と会っても何ら変わらない態度で接してきた。

むしろ、告白したことすら覚えてねぇの?っていうぐらい、俺以外の男に絡みやがって。



「好きだよ、剛典…」

「じゃあ何でエリーんとこいってるわけ?」

「だって。剛典緊張するんだもん…」

「…はぁ?」

「かっこいいから。ね、付き合ってよ私と…」

「いいよ」



俺の言葉にキョトンとしたユヅキさん。

え、何でそんな顔すんの?

自分から言ったんだよね?

それなのにそんな吃驚した顔…



「い、いいの?」

「うん、いいよ」

「え、どうして?」



顔を近づけてくるユヅキさんの頬に手を添えると、酒のピンクよりもトマトみたいに真っ赤になった。



「好きになったから。していんだよね?」



顔を寄せる俺に、スッと何故か後ろに引かれて。

おいおい、ここまできてそれはないっしょ!

ムっとしてユヅキさんの手首を掴んだら、マジ泣きそうな顔で言うんだ。



「待って、心臓出ちゃう。心の準備できてないっ!」



その顔が超絶可愛くて、仕方無く俺はユヅキさんを掴む腕を緩めた。



「10秒だけ待ってあげる」



だからそう言って俺は目を閉じる。

心の中でゆっくりと10秒数えて目を開けたら、そこにいたのは変わらずユヅキさん。

何か腹をくくったようなその顔に、俺は思わずゴクっと生唾を飲み込んだ。



「ここじゃみんないるから…」

「え?」



腕を引かれて向かうはここ、健二郎さん宅の風呂場…



「え、ここで?」

「ここなら誰も来ない…」



確かにそうかもしんないけど、ここでやんの?

そう思っている俺の首に腕を巻きつけて、背延びをしたユヅキさんはおもむろにそのプルっとした赤めの強い柔らかそうな唇を重ねたんだ―――。


あんなに緊張していたはずなのに。


正直な所、全てにおいてリードするのは男の役目だと思っている。

キスをして触れあったその瞬間から俺は主導権を握って攻めに専念する予定なんだけど…



俺の身体を横から触るその手つき、やばくない!?

女ってそんな厭らしい動きすんの!?

キスだってなにこの苦しさっ…

俺が攻める激しいキスだって何度もしてきたはずなのに…



「ンッ…ユヅキさっ…」



苦しまぎれに名前を呼ぶとチュっと音を立てて、唇をまだ触れ合わせたまま「なに?」小さく答えたんだ。



「…激しいね」

「そう?普通じゃない?」

「…緊張してないの?」

「してる…ほら…」



そう言って今度は俺の唇を舐めながら手を自分の胸元に当てた。

そのまま心臓に手を当てると確かにドクドク早鐘をたてている。

それがユヅキさんの言う「緊張してる」の何よりの証拠だと思うけど…



「剛典…ちゃんと触って…」



何とも色っぽい声に俺の下半身がギュっと反応を見せた。



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