▼ イニシャルN5
手を繋ぎながら屋上からの階段を降りる。
「俺分かったかも」
「ん?」
「初雪…。何か気分あがって普段言えないようなことも言えたり…いつも以上に可愛く見えたり…ほんの少しそーいうのあるんじゃねぇ?」
なるほど。
初めて落とす雪だから空もそんな魔法をかけてくれているのかも、しれないね。
キュッと腕に抱きついて「いつもより可愛く見えた?」そう聞くと、照れたように笑って「いつも可愛いよ」なんて答えてくれる。
はぁーほんと幸せだなぁ。
そう思って2人で納会フロアに戻ると、私達を見て先輩の哲也さんが目を見開いた。
「何で手繋いでんの?おい直人!」
「えっ!?あ、やべ!」
ジロっと片岡くんを睨む哲也さんは私の直の先輩。
黒木さんと同期でこっちは物凄い仕事の出来る人で。
「あー哲也さんこれはその…」
「お前俺の大事なユヅキちゃんに手出したの?」
「すいません!」
ガバっと頭を下げる片岡くんだけど、黒木さんがそんな私達に近寄ってきて、片岡くんの顔をあげさせた。
優しいとこあんじゃん!
なんて思っていたら、まさかの爆弾発言!!
「直人、唇にユヅキちゃんのグロスついてんぞ!」
「えっ!?マジっすか!?」
慌てて片岡くんが口元を手で隠すけど、そんなことしたらバレちゃう、私達のキスが。
もー絶対黒木さんそれ狙って言ったんでしょ。
爆笑してるもんっ!
「片岡くんこれ以上ここにいたらもっと墓穴掘るよ!片付け行こう!」
私の言葉に「うんうん!」大きく頷くと黒木さんと哲也さんに「すいません!でも俺、ユヅキちゃんマジなんで大事にします!」そう言ってまた私の手を握った。
後ろから哲也さんの「俺は認めねぇ――ぞ、直人!」って声がしたけどそのまま片付けをしに行く私達。
「哲也さん…狙ってたかなぁ、ユヅキちゃんのこと…」
ボソっと不安気に呟いた。
その顔があまりに可愛くて。
「ユヅキは直ちゃんだけだよ安心して」
キュって腕に絡みつくともう半端なく瞳を揺らして「直ちゃんやべぇ!」って叫んだんだ。
「ユヅキちゃんこのまま俺ん家来て?二人でクリスマスやろ?ってももう終わっちゃうけど…」
「うん、やる!直ちゃんと一緒だったら何でもいい!」
「もう可愛いからやめてそれ!」
照れ笑いする片岡くんの頬にチュってキスをすると、ふにゃ〜って頬が緩んだんだ。
「メリークリスマス☆ナオト」
*END*