SHORT U | ナノ

 イニシャルN4

「幹事2人抜けちゃって大丈夫かなぁ」

「大丈夫っしょ!さすがに初雪は譲れない…」

「あはははっ!ね、もう分かってるよね?」




肩からほんのり顔を外す私をド至近距離で優しく見つめる片岡くん。

もちろんその顔は楽しそうで。

私の前髪を指でそっと弾く。


目を細めて「イニシャルNのこと?」そう言うんだ。


もーこのまま連れ去られたい衝動にかられつつ…


小さく頷くと片岡くんの頬を指でプニって押す。




「ナオトのN、だろ?」



自信満々に私の頬をプニってやり返す片岡くん。

小さく頷く私に、フって笑う。

そんなに身長差もないから顔の距離が近くて、ほんのり吐息がかかる。



「…片岡くんは?片岡くんはその、いる?」



今更ながら聞いてみた。

これで「いない」なんて言われたらそれこそ撃沈だけど、ここまできてそれはなさそうで。


私の頬を指でスッとなぞりながらニコッと八重歯を見せて笑った。



「いるよ、目の前に…俺の好きな子」

「私?」

「好きだよユヅキちゃん。俺と付き合ってくれる?」



くったくなく笑いながら私の返事を待つ片岡くんにギュッと抱きついた。



「嬉しい!」

「ユヅキちゃん…」

「ん…」

「さっきからすげえ我慢してて…。もう待てねぇやごめん」



片岡くんの甘い言葉のすぐ後、私を包み込むようなキスで溢れた―――――。




クリスマスの夜に初雪の中で片岡くんとの甘いキス。

ロマンチックすぎる。



そっと唇を離すとギュッと抱きしめられた。




「寒くない?」



耳に唇をくっつけて話すからそこがもうくすぐったくて、でも離れたくなくて。



「へーき!片岡くんあったかいから!」

「んじゃもう少しこのままでいよ」

「うん…」

「はぁー…幸せすぎる…」

「私も…」

「ユヅキ…」



抱きしめていた腕を緩めるとまた顔を覗きこまれて甘いキス。

キスとハグを何回も繰り返している私達は雪よりもお互いの温もりを感じることに集中していたなんて。

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