SHORT U | ナノ

 イニシャルN2

「へぇ、ユヅキちゃん好きな人いんの?」



片岡くんが煙草を吸いながらフッて笑っていて。

…いますよ、今隣に。

なーんて言えないけど。


私はニコッと微笑んで「いるよ、そりゃ」そう言ったんだ。


そしたらガバってもたれていた身体を起こして吃驚した顔で私を見ていて。

煙草を落としそうな勢いで聞くんだ。



「ちょ、誰?」



私の腕を掴む勢いで。

そんなに驚く!?


普段見ないその反応がちょっと可笑しくて。



「言えないよーそんなの!」

「…えぬ?」

「へ?」

「え、ああっと、ど、どんな奴よ?ユヅキちゃんの心掴んでる男って…」



…言ってみようか?

片岡くんみたいな人ってことを。


チラリと横を見ると私のことをガン見していて。



「ふふふ。えっとねぇ、すっごく頑張り屋で、負けず嫌いで、とっても優しくてでも、強い人…かな〜」



目をパチパチして私を見つめていた片岡くんは、どら焼きみたいな口をあけて続けた。



「…外見は?」

「あは、そこまで聞く?」

「聞く聞く!教えてよ!」

「うーん」



私はチラッと片岡くんを見て。



「背はそんなに高くなくて、顔にホクロがあって、八重歯見せてよく笑う可愛い人!」



どんどん笑顔になっていく片岡くんを見て私も嬉しくて。

これってそーいうことだよね?

だってなんか…



「ほうほう!なるほどな!」



うんうん頷きながらまた私の頭をポンポンすると、ニコッと微笑んでまたそのどら焼きみたいな口を横に開いた。



「イニシャル教えてよ!」

「へ?」

「そいつのイニシャル!あ、なんなら当てようか?」



得意気な顔してそう言う片岡くんが笑う。

絶対分かってるんだろうなって思う、ここまできたら。

告白したらうまくいく?


思わず口を開こうとした私、だけどガチャってそこに入ってきた別部署の人。

慌てて立ち上がって片岡くんから少し距離をとった。




「あ、お疲れさまです!」

「あ、ユヅキお前ここにいたのかよっ!?」

「わぁ、すいません!すぐ戻ります!片岡くんまたっ!」

「あっ、待って!イニシャル!!」

「えっ、あ、Nだよっ!」



去り際にそう言ったら片岡くんがめちゃくちゃ笑顔で「だよなっ!」ってガッツポーズをした。

もう何だか嬉しくて!

ナオトのNに喜んだ片岡くんが可笑しくてクスって1人微笑んだんだ。

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