SHORT U | ナノ

 傍にいさせて3

「何も…ないって…」

「嘘つけ。んな泣きそうな顔しやがって…」




ソファーの前に突っ立っている私の手をキュって下から握る健二郎にドキっとする。


温かい人肌に、その温もりに心の奥がジワリと熱くなる思いだ。


この人は私のことが好き、なんだろうか…?




「いいの、私誰にも助けてもらおうなんて思ってないし…」




私の言葉に握った手にオデコをつけてそこに頭ごと健二郎の温もりが落ちる。



どう、したらいいのか分からなくて、ただされるがまま健二郎に手を握らせている私。




「助けたる俺が…。他の奴になんて渡さへんよ…」




そう言うと顔を上げてジッと私を見つめるんだ。


瞳の奥が熱く揺れていて、やっぱりドキドキする。




「健ちゃん酔ってるの?」

「飲んでへんよ」



唯一の逃げ道だと思ったけど、それすら塞がれて。


私の手をギュっと握り締めている健二郎はその手に力を込めて自分の方に引き寄せた。


あぐらをかいて開いている足の間に私を入れて、そのまま片手だけ腰に回して抱き寄せられる…




「健ちゃんやめて。私いいの、本当に一人で居たいの…」



お願いだから私の中に誰も入ってこないでほしい。


あんな惨めな思い、もう二度としたくないんだよ。




「お前がよくても俺があかんねん。俺がいややねん、ユヅキおらな…」



フワっと健二郎の髪に触れるとギュっと強く抱きしめられる。

というよりかは、私のウエストに巻きついている健二郎。

滅多に見ることのない後頭部が見えて、何だかちょっとだけ可愛いなんて。



「健ちゃん…嬉しいけど…―――」



その後は声にならなかった。


グイって健二郎の腕が私を下に引き寄せて、立て膝ついてそこにしゃがみ込む私の両頬を手で包み込むようにして顔を上げると、迷うことなく健二郎の顔が近付いてきた。



なにこいつ、何オトコ出してんの?


いつもただのおっさんのくせに、何今日に限ってかっこいいことしちゃってんの…




「離して」なんて言える程余裕がなくて。


ゆっくりと目を閉じる私に、健二郎の熱いキスが永遠って思えるぐらい続いたんだ―――



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