SHORT U | ナノ

 あの日から3

「眞木くん?」

「送ってく!荷物多いし持つよ!」

「え、大丈夫だよ!これそんなに重くないし!」



そう言って私はプレゼント交換の品を軽く上げた。

そんな私をジーッと見ている眞木くん。


あ、そうか、これ!



「これ眞木くんのだったよね。今あけてもいい?」

「もちろん!」



嬉しそうに私の隣に立った眞木くんはすごく背が高くてちょっとドキドキする。

女子に対して紳士的な眞木くんがこうしてこの距離に立つことなんて今までそうなかったもんで。



「ゆきみのクマみたいだなぁ、これも…」



袋から取り出して驚いた。

そこにいるのはそう、本当にゆきみが持っていたクマとうり二つ。



「へ、おそろ?」

「ん〜まぁそんなとこ」



眞木くんの視線はクマのポケット。

まさかそれもあるの?


えだって。

プレゼント交換だし、誰が何番引くかなんて分からないじゃん。

ナイナイナイ!ありえない!


でも。



「どうして?」



ポケットから取り出したのはやっぱりなネックレスで。

ゆきみのとデザインは違うものの、その演出はまるで一緒だった。



「メリークリスマスユヅキちゃん。好きだよあの日からずっと。俺と付き合ってくれませんか?」



スッと差し出された眞木くんの大きな手。

私はその手を迷うことなく握った。



「奇跡だ…」

「え?」

「私もずっと好きだった、眞木くんのこと。嬉しい…」




見上げた眞木くんがふんわりと微笑んだんだ。


「あの日から…」確かそう言った眞木くん。


見上げている私の頭にポンと手をついて至近距離で優しく微笑む。



「夏の大会でさ、ユヅキちゃん見たでしょ、その俺が泣いてるとこ…」



まさか眞木くんの口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもみなくて。

大きく目を見開く私を見て、また優しく眞木くんが微笑んだ。



「気づいてたんだ、あの時。だけどユヅキちゃんただジッと俺が泣き止むの待っててくれて。いや待ってたっていうか、黙って傍にいてくれたでしょ。すごく嬉しかったんだ。本当はあんな涙誰にも見せられるようなもんじゃないんだけど、ユヅキちゃんが俺に気づかれないようにそこに居てくれたことが何かすげぇ安心できて、気が済むまで泣けたんだって。それからずっと俺の心はユヅキちゃん一筋!」



眞木くんがそんな風に私を想ってくれていたなんて。

信じられない。



「私偶然見ちゃって。みんなの前ではキャプテンだからって強くいたのかもしれないけど、あの時泣いてるのが眞木くんの本心だって。すごく悔しかったんだろうなって。不謹慎ながらも眞木くんの涙がすごく綺麗で見とれて…動けなかったの。眞木くんのそういう強い所も、弱い所も…好きだと思った。私もあの日からずっと眞木くん一筋だよ!」



私の言葉に眞木くんがほんの少し照れたように目を逸らした。




「あれ絶対送り狼になるよな、大ちゃん!あーやだなぁ、ユヅキちゃんが喰われんの。友達としてすげぇ嫌だなぁ俺!」

「でも眞木くん紳士だから色々うまそうって、女子の中では結構噂だったよ。眞木くんなら私、ユヅキのこと任せてもいいかなぁ!」

「えっ、なにそれ!女子ってそんな卑猥な話すんの?俺は?片岡くんは噂あった?」

「女子だってするよ、ガールズトークなめんなよ!片岡くん…は、、特に…」

「うわ俺人気ないのかよー」

「人気はあったよ。直ちゃん可愛いし。だからえっと…童貞?って…」

「まじかよっ!」

「いやもう、いい加減にしてくれる?」



そこでようやく会話に入っていった眞木くん。

呆れたような顔だけど、結局私もゆきみと直人くんがうまくいってすごく嬉しい。



「直人が送り狼になったんじゃないの?」



眞木くんが直人くんの肩をスコンっと軽く叩いて。

大袈裟によろける直人くんは、わざとらしくゆきみに抱きつく。



「ほら見てよユヅキちゃん!直人今わざとゆきみちゃんに抱きついてさぁ。俺こそ嫌なんだけど直人にゆきみちゃん食われるの…」



そう言いながらも、眞木くんが私の肩にそっと腕をかけた。

ほんの少し距離が縮まってそれだけでドキドキする。


クリスマスに告白されたい!とは思っていたけど、まさか本当にそうなるなんて思ってもみなかったから、正直なところ、心の準備なんて何もできていない。

辛うじて勝負下着をつけてきた辺り、満更でもないのか私…。



「二人とも、食べること前提に話してるみたいだけど…」




ゆきみの言葉に眉毛を下げた眞木くんが「あれ、違った?」なんてとぼけていて。


ガールズトークでは「眞木くんは絶対手早そうだよね!」なーんて笑いながら言っていたからやっぱりそうなの?

まぁでも私、眞木くんとなら…



「それはさ、彼氏次第だよね?」



ゆきみが私を見てそう言う。



「そうそう、私もそう思ってた!身体の準備はもうできてるから、後は心の準備をどう持っていくか、眞木くん次第!」

「先週2人で勝負下着選んどいてよかったねーユヅキ!」

「ね、ね!ゆきみの超可愛いよー直人くん!」

「ユヅキのは、すごいsexyだよ、眞木くん!」



キャッキャッする私達を見て、眞木くんと直人くんの顔が真っ赤になっていた。



「俺達次第なら、ねぇ。ユヅキちゃん行こ!」



何だかはやる気待ちを抑えて…っていう感じに眞木くんが私の手を握った。



「直人!ゆきみちゃんまた新学期にな!メリークリスマス!」



強引に手を振って私を連れ去る眞木くんに、後ろから「メリークリスマス!ユヅキちゃんまたなっ!」って、直人くんの声がした。

ふり返るとゆきみが手を振っていて、振り返す私に笑顔が届いた。



「ユヅキちゃん、もう少しだけ2人きりでいたいんだけど、門限とかある?」

「あ、うちわりと放任。今日はゆきみん家泊まるって言ってきたし、本当にそのつもりだったの!」

「うそ、まじ!?じゃあその時間全部、俺にくれない?ユヅキちゃんからのクリスマスプレゼントってことで!」

「…うん!あげる!」

「うわ、めっちゃ嬉しいっ!!!じゃあ俺ん家連れてっちゃう!」




告白された日にお持ち帰りなんて今時珍しくない?

ドキドキしながらも私は一歩踏み出して、眞木くんの腕の中に飛び込んだ。



落ち着いたらゆきみとまたガールズトークしようって思いつつ、今は目の前にある幸せを思いっきり噛み締めなきゃって。



「ま、…大輔くんメリークリスマス」

「…っは!メリークリスマス、ユヅキ!」





*END*
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