▼ あの日から2
「ユヅキ中身なんだったー?私これ!」
ゆきみが手にしていたのは可愛いクマのぬいぐるみ。
それゆきみが引いたからよかったけど、他の男子が引いたらそれこそいらないよね。
そんな顔で私はクマを抱くゆきみを見つめる。
「あ、ねぇでもこのクマ…あ、ほらやっぱり!」
着ている服のポケットに何か入っていて。
それを取り出すとそこには綺麗なネックレスが入っていた。
「あ、それはっ!!」
途端に近くにいた直人くんが慌てたようにゆきみのクマを奪い取るけど、すでにネックレスはゆきみの手の中にあって。
「想定外だって、ユヅキちゃん!それ俺の予想では家に帰ってから見つける予定で…」
ちょっとだけ顔の赤い直人くんに、私の中のお節介が溢れ出しそう。
まさか直人くん、それでゆきみに告白するつもりだったの?
キョトンとしているのはゆきみだけで。
可笑しくて仕方ないって顔で眞木くんが直人くんの肩をパシって叩いた。
「ゆきみちゃん、あのさ…」
照れた直人くんの顔に、さすがにゆきみも今どんな状況か分かったみたいで。
泣きそうな顔で私の腕をギュッと掴む。
「クリスマスだからじゃないんだけど、けどこのイベントにのっかるのも悪くないとも思ってて、あれ俺何言ってんだ!まぁいいや。えーと、単刀直入に言う!俺と付き合ってくださいっ!!ずっとゆきみちゃんこと好きだった!」
お見合いイベントの告白のシーンみたいに、「お願いします!」そう頭を下げて手を差し出す直人くんに、最高潮この場が盛り上がる。
クラス全員が見守る直人くんの一大告白。
ゆきみの答えは分かってる。
だってゆきみもずっと、直人くんのことが大好きだもんね。
真っ赤な顔で私を見るゆきみに、笑顔でポンっと背中を押してあげた。
「私もずっと好きだったよ。よろしくお願いします!」
キュッと直人くんの手を握り返すゆきみに、クラスから拍手喝采おめでとう!があがった。
どさくさに紛れて「ワオッ!」ってゆきみを抱きしめる直人くんに、もっともっと拍手が湧いた。
そんな幸せな時間はあっという間に過ぎていき。
「直人!送り狼になるなよ!」
「え、な、ならねえよ!俺は紳士だから!」
絶対に嘘っぽい直人くんの言葉にまたみんなが笑う。
「ほんと羨ましい、ゆきみ。直人くんと付き合ったら絶対幸せだろうなー」
思わずこぼれた本音に私の鞄をスッと眞木くんが奪った。