SHORT U | ナノ

 嫌いなアイツ3

お昼を過ぎたころ、外がザワついてきて。

鬼邪高の奴らが来たんだってすぐに分かった。


「ユヅキ、行け!」


コブラに言われてあたしは課題を抱き抱えて図書室へと走った。

そのすぐ後、ガシャ――ン!って窓の割れる音がして、雑音が耳に入ってくる。

下で喧嘩が始まったのが分かった。

課題をやっているとはいえ、やっぱり気になるのはコブラのこと。

総長だからやっぱりみんなコブラを狙ってくるんじゃないかって…。

族の世界のことなんてさっぱり分からないけど、チームの頭の顔ぐらいみんな分かるはずだよね…。

コブラが物凄く強いってことは噂で知ってる。

でも…―――



ハッとした時には既にこの図書室に鬼邪高の奴らが数人入って来ていた。

ついコブラのことばっかりを考えていたせいか、足音とか気配に気づくことすらできなくて。

あたしを見ていやらしく笑っている。

なに、こいつら。

あたし喧嘩とかできないし。



「お前か、コブラに付き纏ってる女は…」



男の言い方に違和感を覚えた。

付き纏ってると言われるような関係じゃない。



「あの女に頼まれたの?」

「偉そうに話かけんなよ、ブス!」



ダンって図書室のドアが締められる。

そこに見張りを立たせてドアが開かないようにしているのが分かって。


数歩後ろに下がる。

でももう窓しかなくて。

こんな場所でこんな気持ち悪い奴にヤラれるぐらいなら死んだ方がマシ。


そう思って窓に手をかけて身を乗り出そうとした時だった。


ガシャンッてドアがぶっ壊れる音がして。

物凄い勢いであたしに近づく男にコブラツイストを食らわせたのは、―――あたしのコブラ。


あんなに強そうに見えたそいつは、コブラの一撃でピクリとも動かなくて。

ドアの下敷きになっている男達も、動けずにいる。


そこに現れたのはコブラファンの女達。

まさかの光景を見て気まずそうな顔をしている。



コブラはあたしの腕を痛いぐらい掴んでいて。



「二度とこいつに手出すんじゃねぇ」



ド低いドスのきいた声を発した。

怯みながらも女達は、あたしを睨みつけていて。



「分かんねぇ女だな、クソが。よく聞けよ」



そう言うと、コブラはあたしの腰に腕を回して抱き寄せた。



「俺が勝手にコイツに惚れてんだよ。欲しいのはユヅキだけだ」



ドキっとする。

コブラがあたしのことを…そう思ったこともあったけど、実際に何かを言われたこともなかったし、だから自惚れはやめようって。



「聞こえたなら消えろ。邪魔だ」



コブラの言葉に悔しげな顔をしながらも図書室から出て行った女達。



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