▼ 嫌いなアイツ2
「ちょっと話しあんだけど…」
コブラと友達になったあの日からあたしとコブラは毎日一緒に過ごすことが増えた。
だけど体育の授業だけは男女別で。
そういう時は決まってこの女たちが現れるんだ…―――女の族たちが。
「なに?」
「迷惑だってコブラさん。あんたに付きまとわれて迷惑だって。離れてくんない?」
コブラには女のファンが数えきれない程いて、なのにあたしに声かける意味がよく分かってはいないけど、あたしとしてはコブラがいなくなっちゃうのは困るわけで。
「それコブラが直接あたしに言ったら信じてやるけど、あんた達に言う意味なくない?」
あたしの言葉に余裕そうに笑った女たちは、パチンって指を鳴らすといきなりバシャンッ…上から水が落ちてきた。
見事命中したあたしは全身びしょ濡れで…
「着替えないっつーの、たく」
「コブラにこれ以上近づいたらあんた、男呼びつけてめちゃくちゃにしてやっから!!」
コブラに逆らう男がいるなら見てみたいけどね〜。
そう思っていたあたしは、その日の放課後あいつらの言葉が本気だってことを知るはめに。
「はぁ?鬼邪高が?たく面倒くせぇな…」
下っぱらしいチハルのスマホに鬼邪高の奴らがどうやら今日ここに喧嘩を売りにくるらしいって情報が入った。
鬼邪高は、うちと並ぶドヤンキー高校で、何かあるとすぐに乗り込んでくる気性の荒い奴が揃っていた。
「おい、ユヅキ!お前さっさと家帰れ!それか絶対ぇ見つからねぇとこ隠れてろ」
コブラがあたしを見て言うけど…
「課題一個残ってるからそれやったら帰る…」
「んなもん明日でいいよ!」
「でも明日やるなら今日やりたい」
「じゃあ図書室にいろ。絶対ぇ誰にも会うんじゃねぇぞ…」
「大丈夫だよ、あたし部外者だし」
プニってコブラがあたしの頬を抓る。
「いいから、今日は俺の言うこと聞けって」
何だか真剣で。
コブラがあたしを心配してくれているんだって分かった。
だから素直に頷く。
「何かあったら俺の名前叫べ。10秒で飛んでくから…」
トクンっと胸が高鳴る。
あたし、コブラのことがすき―――