▼ ダージリン王子4
「俺達の存在を人間に知られたままだと生きていけないんだ。願いを叶え終えたら、全ての記憶を消す。それがルールだ」
「え…」
「それから、例えまた同じ条件の元、俺を呼び出したとしても出れない。一度呼ばれた主人の元へ二度はいけない。だから俺はもう二度とユヅキの前には現れない…ダージリン王子としては…」
「そんな…」
見るからに落ち込む私の頭をまた敬浩が撫でてくれる。
そんなことさえも私忘れちゃうの?
「そんな顔すんなよ…」
「だって悲しい…」
「大丈夫だ、その感情も全部忘れてなくなっちまう。明日朝起きて幸せな気分でいられるようにしといてやる…それぐらいは簡単だから」
「みんな納得してるの?」
「納得してくれなくてもそれがルールだから。逢いたいと思えばいつでも逢える。俺を誰だと思ってんだ?」
目の前でニコってえくぼを見せて笑う敬浩。
「たかぼー」
「…特別に許してやるよ、その呼び方」
「みんな呼んでるよ、ファンは」
「そうなのっ!?」
驚いてる敬浩は可愛くて、思わず私も笑いが零れた。
「きっと幸せになれるから…な」
ギュっと私を抱きしめる敬浩。
その胸に顔を埋めてそっと頷いた。
「ユヅキ…」
「………」
近づく敬浩の顔。
目を閉じた私にゆっくりと敬浩の唇が重なった―――
そのまま意識が遠くなって…
ふわふわした感覚のまま私はきっとベッドに運ばれた。
パチ。
目を覚ますと身体が軽い。
こんなに目覚めのいい朝は久しぶりだった。
「ん〜〜〜」
大きく伸びしてベッドから降りる。
リビングに行くと既に妹が起きていて。
録画しておいたドラマを見ていた。
そのまま後ろのソファーに座って私も一緒に見ていた。
「ねぇ、これってたかぼーも出てるよね?」
「えー?うん。けどまだ2話だし、これからじゃんっ?」
「ふうん。つまんない…」
「えっ!?お姉ちゃんATSUSHIのファンだったよね?」
妹の吃驚した顔と声に思わず後退りしそうになったけど、そんなに吃驚されるくらいATSUSHIのファンだったっけ?
「うんでも、たかぼー何か好き!今日からたかぼーファンになろっかな〜」
何となく敬浩を見ると胸の奥が疼く気がして。
よく見ると可愛いし。
「嘘みたい…一体何があったのよ…」
「さぁ、何も?それより紅茶淹れて…ダージリン。ストレートで!」
「はぁ?牛乳は?」
「いらない。ストレートで飲みたい気分なの!」
「…信じられない…」
しぶしぶ席を立って紅茶を淹れにいく妹。
録画してあるHDDでEXILEの歌番組の映像を見る。
敬浩が映るとやっぱり胸がキュンってして、でも何となく懐かしくも思えて不思議な気分だったんだ。
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「敬浩くんまた何かしちゃったの?」
「これぐらい許されんだろ…」
「全く懲りないね〜」
「哲也くんこそ、どうだったの?」
「俺?珈琲のほう全く呼ばれないよ…」
「だろうね…」
*END*