SHORT U | ナノ

 ダージリン王子4

「俺達の存在を人間に知られたままだと生きていけないんだ。願いを叶え終えたら、全ての記憶を消す。それがルールだ」

「え…」

「それから、例えまた同じ条件の元、俺を呼び出したとしても出れない。一度呼ばれた主人の元へ二度はいけない。だから俺はもう二度とユヅキの前には現れない…ダージリン王子としては…」

「そんな…」


見るからに落ち込む私の頭をまた敬浩が撫でてくれる。

そんなことさえも私忘れちゃうの?



「そんな顔すんなよ…」

「だって悲しい…」

「大丈夫だ、その感情も全部忘れてなくなっちまう。明日朝起きて幸せな気分でいられるようにしといてやる…それぐらいは簡単だから」

「みんな納得してるの?」

「納得してくれなくてもそれがルールだから。逢いたいと思えばいつでも逢える。俺を誰だと思ってんだ?」


目の前でニコってえくぼを見せて笑う敬浩。


「たかぼー」

「…特別に許してやるよ、その呼び方」

「みんな呼んでるよ、ファンは」

「そうなのっ!?」


驚いてる敬浩は可愛くて、思わず私も笑いが零れた。


「きっと幸せになれるから…な」


ギュっと私を抱きしめる敬浩。

その胸に顔を埋めてそっと頷いた。


「ユヅキ…」

「………」


近づく敬浩の顔。

目を閉じた私にゆっくりと敬浩の唇が重なった―――


そのまま意識が遠くなって…

ふわふわした感覚のまま私はきっとベッドに運ばれた。





パチ。

目を覚ますと身体が軽い。

こんなに目覚めのいい朝は久しぶりだった。


「ん〜〜〜」


大きく伸びしてベッドから降りる。

リビングに行くと既に妹が起きていて。

録画しておいたドラマを見ていた。

そのまま後ろのソファーに座って私も一緒に見ていた。


「ねぇ、これってたかぼーも出てるよね?」

「えー?うん。けどまだ2話だし、これからじゃんっ?」

「ふうん。つまんない…」

「えっ!?お姉ちゃんATSUSHIのファンだったよね?」


妹の吃驚した顔と声に思わず後退りしそうになったけど、そんなに吃驚されるくらいATSUSHIのファンだったっけ?


「うんでも、たかぼー何か好き!今日からたかぼーファンになろっかな〜」


何となく敬浩を見ると胸の奥が疼く気がして。

よく見ると可愛いし。


「嘘みたい…一体何があったのよ…」

「さぁ、何も?それより紅茶淹れて…ダージリン。ストレートで!」

「はぁ?牛乳は?」

「いらない。ストレートで飲みたい気分なの!」

「…信じられない…」


しぶしぶ席を立って紅茶を淹れにいく妹。

録画してあるHDDでEXILEの歌番組の映像を見る。

敬浩が映るとやっぱり胸がキュンってして、でも何となく懐かしくも思えて不思議な気分だったんだ。







――――――――――――――――


「敬浩くんまた何かしちゃったの?」

「これぐらい許されんだろ…」

「全く懲りないね〜」

「哲也くんこそ、どうだったの?」

「俺?珈琲のほう全く呼ばれないよ…」

「だろうね…」





*END*
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