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たったそれだけ。
その一言だけで私が辛かった気持ちが全部拭い去られたようで。
一人で頑張っているつもりでいたけど、それは間違いだったって思わされた。
行き交う人も、雨宿りで駅に留まる人もたくさんいる中、私を離そうとしないナオトの温かい身体にそっと身を寄せた。
目を閉じるとより一層ナオトの香りが鼻についてドキっとする。
煙草と香水の入り混ざったこの匂いが大好きで、彼のスーツにそっと顔を埋めた。
そんな私をポンポンって優しく撫でるこの手にどれだけ癒されるか…。
「ナオト…」
「うん」
「死にそうだった…」
「うん」
そう言いながらギュっと私を抱きしめた。
「もう大丈夫だから。俺が傍にいるから安心しろ…」
「うん…」
しばらくその場でギュっと私を抱きしめていてくれたナオト。
少し落ち着いた私を覗き込んでニコっと微笑む。
そのままチュって一瞬小さなキスが落ちて。
「続きは帰ったらな」
ポスっと頭を撫でるとそっと私を離した。
大きなナオトの傘を出してそこに二人で入る。
ちょっとだけ寄りそう私をもう一度覗きこんで顔を寄せるナオト。
グッて腰に回された反対の腕が私を引き寄せてさっきとは全然違うキスが落ちてきた―――。
「ユヅキがそんな顔の時は決まって俺もしんどい時だから…繋がってるってこと、忘れんなよ!」
長いキスの後、ナオトがくれた言葉。
ああ、一人じゃないんだって。
この世で自分が一人ぼっちな気分になった時こそ、ナオトが苦しい時なんだって…
そう思えることができるようになったのは、今日ナオトが逢いに来てくれたからだって。
平日の何でもない日。
そんな日でもナオトがいれば心はいつだってパラダイスだね。
*END*