僕と主のイタズラ日記
◯月※日
今日から日記を書いていこうと思う。主は幼いからか、鶴丸みたいな悪戯をするんだよねえ。
その度に僕を巻き込むのはやめてほしいかなあ。
1月某日
今日は主が僕の手を引いて、休憩していた鶴丸の所に来た。手には蜜柑を持ってる。
何をするのかと思ったら、僕に手伝わせて鶴丸の頭に乗せて「かがみもちー!」と叫んだ。
鶴丸はキョトンとしていたけど、分かったみたいで「ああ、そうだな。鏡餅だ!そら!」って笑って主を抱き上げたよ。
2月某日
今月は節分。豆を鬼役に当てて災厄を祓う行事……のはずなんだけど。
主は豆だけじゃなくて花も持っていた。そして僕を連れて、大倶利伽羅の所に向かった。
「おにはーそとー!」何故か大倶利伽羅に豆ではなく花を投げつけた。
豆が来ると思った大倶利伽羅はポカーンとしていた。うん、豆じゃないよ。
「だって、まめよりおはなのほうがきれいでしょ?」もうそれでいい気がしてきた。
大倶利伽羅、桜吹雪をしまってくれないかな。無表情に桜吹雪はシュールだよ。
3月某日
今月は雛祭りだね。燭台切と歌仙が張り切ってご馳走を作ってる。男しかいないのにな。
そんな事をするから、主が悪戯しようとしていた。皿に分けられたちらし寿司の中に、雛あられ入れちゃってる。僕を見てシーってしなくていいから。言わないよ。
そのちらし寿司は宗三左文字の元に運ばれたよ。案の定「あられ!?」って驚かれた。
「あ、そーざがあたりだー!」「では福が来るのでしょうね」
その態度の変化に僕は着いて行けないよ。もし、鶴丸の悪戯だったらどうなるんだろうね。
4月某日
春には色んな花が咲くよね。主も綺麗な花は好きみたいだ。
そんな時にも悪戯はする。今回は同田貫だった。同田貫の持ってる兜の中に花を詰め込んでた。小さな花束みたいだよね。なのに、同田貫は気が付かずに出陣しちゃってね。
帰って来たら顔を真っ赤にしてたよね。やっと気付いたの?
5月某日
今月は子供の日。……こんな日もおとなしくしてくれない、僕の主。
この前花だらけにした同田貫の兜を盗んで追いかけられてた。僕にパスしないで。
でも、やりたい事は分かっていたから目の前の骨喰に兜をかぶせた。
「な、何だ……!?」って動揺していたよ、そりゃするよね。
「こどものひなの!あ、ちまきたべたい」燭台切がちょうど呼んでるよ。
6月某日
雨が降ってうっとおしいよね。六月って。
そんな時でも主は悪戯を止めない。今日は僕を連れて山姥切の元にやって来た。
「てるてるぼーず、てるぼーず。あーしたてんきにしておくれー」
そう言いながら山姥切の首元にリボンを結んだ。中々可愛いじゃないか。
あ、首絞めないようにね。主。
「お、俺はてるてる坊主とやらじゃない!」
完璧にてるてる坊主にしか見えないよ。もしくは打ち粉だね。
7月某日
「あーつーいぃぃぃいいい」
主も暑さには弱い。ゴロゴロゴロゴロしてる。
そんな主は内番で使うホースを虎徹兄弟に向けて勢いよく蛇口をひねった。
びしょ濡れになった虎徹兄弟に、主は笑っていた。
「がんさくもしんさくもかわらないね!」その通りだね、主。ついでにこっちにも水をかけてくれないかな、暑いんだ。
8月某日
風がなくなった。7月以上に暑い。
そんな中で、主が買った物を庭に仕掛けに行った。主じゃ危ないからね。
日も沈み、皆で珍しく庭に近い広間で食事をしていた。僕はそっと抜け出してそれに火をつけた。花火が上がる。綺麗だよねえ。
「主の悪戯かな?」「うん、あおえといっしょに!」
僕の事は言わなくていいよ。ほら皆がこっち見た。
9月某日
まだまだ暑いけど、少しは涼しくなってきた。
敬老の日なんていうのがある事を教えたら、主は三日月さんの部屋に向かった。
三日月さんは出陣中でいなかったけど、主は「いつもありがとう」と書いた綺麗な和紙を三日月さんのタンスの中に入れた。
帰って来た三日月さんが喜んでいたのは言うまでもないよ。
10月某日
ハロウィンって言うのがあるよね。主、大暴走。
大倶利伽羅から腰巻借りてきて吸血鬼のふりしてる。主、それ外套じゃないよ。
そのまま江雪さんの所に特攻。「とりっく おあ とりーと!おかしくれなきゃいたずらしちゃうよ!」
何で僕を連れて来たのかな?疑問に思っていると、「ほら、あおえも!」
僕も言うのかい?とりあえず言っておくと、江雪さんはしばらく考えて何も持ってないと答えたから二人で顔を見合わせて髪を結ったよね。
江雪さん自身は満足そうな顔をしていたのが解せないなあ。
11月某日
寒くなってきて紅葉も見頃だよね。落ち葉を持って来て、主は赤い紅葉を加州の襟巻の中にいくつか差し込んでいた。黄色い紅葉は小狐丸の腰ひもの中に押し込んでいた。
「ぬしさま、これは……?」「主―、何でこれ入れてたの?ガサガサしてちょっと痛かったんだけど」
「だってー。あかいろ、かしゅーのいろ。きいろ、こぎつねのいろー!」
色で判断してたんだね。……二人とも季節外れの桜を舞わせるのを止めようか、主が窒息しそうだ。
12月某日
もう一年が終わる。もち米やらおせちの仕込み、年越しそばの用意に歌仙と燭台切が大忙しだった。今月は悪戯しないんだなあと思っていたら、主は僕に抱きついてきた。
「どうしたの、ある……」言葉が続かない。主にくすぐられて、笑いが止まらない。
「ちょ、ど、も、やめて……!」「あおえがわらってるのみたかったの。だからいたずらしよーっていったんだけどあおえ、わらわなかった。やっとわらった!」
……僕の笑顔が見たかっただけか。何だ、言えばすぐに笑ったのに。多分、その笑顔が見たかった訳じゃなかったんだろうけどね。
「ねー、あおえ。らいねんもよろしくね」
こちらこそよろしく、主。来年も一緒に悪戯しようね。
こんな一年も、悪くないね。