▼可愛くなりたかったのにA(13)

あの日の騒動をきっかけに13は名前から避けられるようになった。
廊下ですれ違えば顔を俯かせて早足で逃げられる、アリーナに連れて行ってほしいと頼もうとすればすでに他のヒーローが行っていたり
声をかけようと近づけば目を逸らして逃げられる。そんな事が何度も続いていた。
「(俺が悪いのは分かってるけど、キツイな……これは)」
本当は今すぐにでもあの時の事を謝りたい
だけれど、謝ることすら名前は許してくれない。
近づけば逃げられる、それの繰り返しで
そんな現実に13は苦しんでいた。

一方、名前の所ではマルコスが
おずおずと「名前ちゃん、最近13さんとは、どう?」と聞いていた。
「……別に、何もないよ」
そう言って笑う名前を見てマルコスは胸が痛くなる。
名前が13を何故避けてるのか分からない、ただ二人の間に何かあったのは分かる。
だけれどその理由を聞いてしまえば、名前を苦しめるのではないかと思いマルコスは中々聞けずにいた。
「…ねぇ、マルコスくん」
「んっ?」
「……私が雑誌とか見て、可愛くなりたいって思うのって変、かな?」
そうマルコスに聞く名前の声は少し震えていた。
マルコスは「そんな事ないよ!」と言う。
すると名前は「そっか…。」と笑うがその笑顔もどこか泣きそうに見えて。
「マルコスくんは、優しいね…13は、そんな事言って、くれなかったのに…!」
そう言った直後名前は耐えきれなくなったのか涙を零す。
マルコスはそんな名前にギョッとしつつも、「だっ、大丈夫!?」と言って名前に近づく。
「13がね、可愛くなりたいって言ったら、無理だって、言って、背伸びしたって意味ないって……!!」
「そっか…そう言われて辛かったよね、嫌だったよね…。」
「わた、し、ただ、13に可愛いって言って、ほしかったのに……!!」
「大丈夫だよ、大丈夫…今は沢山泣きな」
そう言うとマルコスは名前を優しく抱きしめるとその頭を撫でる。
そして、思うのはただ一つ。
「(13さん…本当はキミが名前ちゃんの涙を拭わないといけないのに)」
ちゃんと謝って、名前の涙を拭って抱きしめて…そしてちゃんと自分の思いを伝えないといけないのに。

そう思っても、死神は姿を表さない。
マルコスは名前に聞こえないぐらい小さくため息を付くと「(僕が、どうにかしないと)」そう心の中で誓った。



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