「……ん? 何だこれ――って、てててて手紙!?」

 下駄箱に手紙と言ったらあれしかないだろう! ピンク色で可愛らしい柄が描かれているそれをキラキラとした目で眺め、早速封を開けた。紙の擦れる音と共に取り出した二つ折りの紙。胸を躍らせながら開くいた。『おめでとうございます。あなたは選ばれました』

「……は?」

 紙の中央にお世辞にも綺麗とは言えない文字で書かれた文が二つ並んでいた。しかも鉛筆で、字が滲んでいる。いろんな意味で最悪だ。選ばれました? 意味が分からない。って、それ以前にこれラブレターじゃなかったのかよ! 畜生!
 腹が立って紙をぐしゃぐしゃに丸めると、ゴミ箱を探した。まったく、一体誰の仕業なんだよ。モテない男の心を弄ぶなんて許せねえ……!

「あー、ちょっと、困るよ。その紙一枚五千円もするんだよ。字を消して再利用しようと思ったのにそれじゃあ無理だ。あとその封筒が二千円。封筒は返してよね」

 後ろでお菓子のように甘い声がして、俺は慌てて振り向く。ハニーブラウンの、見るからにサラサラとしている髪、王道学園なら間違いなく副会長ポジションな綺麗な顔立ちをしている男が酷くガッカリした様子で俺の手元を見ていた。……誰だ? っていうか、え!? この紙一枚で五千円!? 高っ! 青褪めながら急いで皺を伸ばそうとすると、男がそれを制した。「いいって、いいって。もうそれは使えないし」

「……あの、ところで誰ですか?」

 制服に縫ってある刺繍が緑だから、二年生だろう(因みに一年は青、三年は赤だ)。訊ねると、意外そうに目を瞬いた。

「なんだ、聞いていなかったの、アッキーから」
「…アッキー? 誰ですか?」
「ええっ? あいつ同じクラスとかってメール送ってきたのに」
「…ん? 同じクラス……」

 アッキー…。なんか、どっかで聞いた…ような。
 俺の頭の中に、ニヤけた笑顔がパッと浮かんだ。

「も、もしかしてアッキーって、國廣…?」
「うん? うんうん、そうだよ。なんだ、知ってるんじゃない」

 最初からフルネーム言ってくれたら分かったのに。呆れた顔をした男に少しむっとしながら、それで用件は何だと訊ねた。