HRが終わり、俺はプリントで重くなった鞄を肩に掛ける。チラリと國廣を見ると、男子や女子の輪の真ん中でわいわい喋っていた。くそ、これだからイケメンてのは…。べ、別に羨ましいとか思ってな……思ってるわ。
 さて、夏木と帰ってもいいが、できるだけ一緒にいるのは控えた方がいいだろう。國廣が恋人とかなんとか根も葉もない噂を言っていたし、不良を嫌悪してる人だとまず近寄ってこないだろうしな。
 こっそり教室から廊下を覗くとちらほら人影は見えたが、そこに夏木の姿はない。よし、今の内に…。教室を飛び出して下足場まで早足で歩く。無事誰に会うこともなく下足場に着いた。それはいい、んだけど……。

「あきら」

 はい、俺の微かな抵抗終了。まさか下足場に待ち伏せてやがるとは。厄介な……!

「いつから待ってたんだお前…?」
「しらね」
「あ、そう…」

 こいつ、鞄がないぞ。教室に置いたままなのか、或いは家に帰って置いてきたのか。後者は態々帰るの面倒だから有り得ないなんて省いちゃならない。だって夏木だからな。

「鞄は?」
「しらね」

 こいつ、ぶん殴りたい。いや、俺が負けるの確定だから無駄な勝負は挑まないけど。

「……はぁ、帰るぞ」
「あきらー」
「何?」
「あ、蝶」
「は? ちょ、待て! おーい!?」

 また幻覚でも見えているんだろうな…。仕方ない、別に一緒に帰ろうと約束をしていたわけでもないし、さっさと帰ってしまおう。