「ここって普通の高校じゃん? でもさ、イケメン金持ち五人組がこの学校にいてさ」
「金持ち?」
「そ、何でも悪友で腐れ縁らしくてさ。あ、因みにその五人組に一年もいるんだけどね。で、その金持ち五人組がこの何もない学校に潤いとか娯楽を増やそうっていってさ、勢いだけでホスト部作っちゃったわけなのよ」
「…え、……その金持ちさんは何故ここに?」
「皆庶民の味を味わいたかったからじゃないのー? やってる行為はまったく庶民じゃないけど」
「へ、へえー…」

 しかし、まさかこんな普通の高校にそんな特殊な部活動があるなんて。もしかして神様からのご褒美だったり? グッジョブイケメン金持ち五人組!
 BLは拝めないにしてもイケメンさんで勝手に妄想してればいいわけだし。何だかんだ、ここってイケメン多いんじゃない? 國廣もカッコいいし。それにしても國廣って新入生なのに詳しいな。もしや結構有名なのか? それが入学志望理由っていう人もいたりして。…流石にないかな。因みに俺は超近場だったからここにした。夏木は知らん。

「ま、俺もあんまりよく知らないんだけどねー。あと知ってるのは…入部が指名制ってことくらいかな? 選ばれた人物だけが入れるらしいよ。選ばれる理由とかどうやって選ばれたことが分かるのかってのは知られてないみたいだけど」
「それって、毎日活動してんの? …というか、そんな金持ちが営業してるものとか飲めるのか? 金銭的な面とか、未成年的な意味で」
「活動日は水曜日と金曜日だよ。取り扱ってるのは一部を除いてジュースらしいよ。ちゃんと皆が買えるような、ね。まあ普通のジュースじゃなくてかなり品質のいい絞りたてとか言われてるけど」

 何故水曜日と金曜日なんだろう。中途半端だな。一度行ってみようかと考えながら、窓の外を見た。二羽の雀が仲良さそうに絡んでいた。あの雀両方とも雄かな。雄だったら良いな、萌える。 
 ぼーっと頬杖を付きながら考えていたら、ふと思い出したように國廣が声を上げた。視線を向ける。まだ國廣はこっちを向いていて、その発せられた声は俺に向けられたものだと分かった。

「すっかり忘れてたけどさあ、アキラちゃんってもしかして堂明中?」

 堂明中――俺の通っていた中学校だ。何故そんなことを訊くのだろうかと思いながら頷くと、少し思案顔になった國廣が数秒黙って、そして俺を見つめた。その顔は今までどうりニヤニヤしていたけれど、目は笑っていなかった。

「じゃあ、さっきのはやっぱり――新山、夏木であってるんだねー」
「……っ」
「アキラちゃんはあの新山夏木の…」

 まさかこんなに早くバレるなんて。これじゃあ言い触らされて友達なんてできないかもしれない。少し顔を青褪めながら俯く。

「恋人?」
「………え?」

 ……え? コイビト?
 予想外の言葉がでて呆気に取られながら顔を上げる。恋人? 誰と誰が? もしかして俺と夏木が? あ、BLじゃん、萌える萌える……。

「なわけあるかあああああ」
「ありゃ、やっぱ違うのかぁ〜。噂って怖いなー」
「え!? 噂になってんの!?」
「うん。まあそんな大きくはなかったし、デマって思ってる人も多いと思うよー。ただ…」
「…ただ?」
「いや、なんでもないや〜。ま、デマならいいんだー」

 ニコリと笑った國廣にさっきの黒い影は微塵もなかった。