「チッ、あのクソ電波…」
「……えっと、じゃあ蔦森くん。座ってくれるかな…?」
「あ? ……あ、は、はい! すいません!」

 やばい、かなりやばい。思いっきり舌打ちとかしちまってるよ! 俺ちゃんと優等生演じられるのか!?
 気がつけば教室はしんと静まっていて、俺は慌てて席に座る。手汗やばいんだけど。

「ねえ、蔦森くん、…だっけ?」
「へ?」
「自己紹介でも言ったけど、私中井真紀」
「え、あ、……蔦森晃、です」
「隣だし、仲良くしてね」
「よ、宜しく!」

 キャラメル色のふんわりとした髪に大きな瞳。頬はほんのりと桃色になっていて、唇は綺麗な形をしている。か、可愛い! 超ストライク! かあ、と頬を染めながら頷く。手を差し出されて、慌てて手汗をズボンで拭き取ると、中井さんはくすりと笑みを漏らした。

「蔦森くんって面白いね」
「え、そうかな…?」
「うん。声かけて良かった」

 で、出会いキター! これって俺に恋のキューピットが舞い降りたんじゃないかい!? てかこれ超いい雰囲気じゃね!?

「お二人さん、何かいい雰囲気ですなあ。俺も交ぜてよ〜」

 テンションメーターが振り切って脳内で踊り出しそうになったとき、邪魔するように声が割って入ってきた。何だよと声がした方向を向くと、前の席の如何にもチャラそうな男がニヤニヤしながら俺たちを見ていた。チャラ男か…。王道には欠かせないポジションだな。受けでも美味しいし。
 いやでも待てよ? こいつイケメンじゃねえか。やばくね? 俺の彼女作り危なくね?

「因みにー二人は俺の自己紹介聞いてた〜?」
「聞いてない」
「即答!? 酷いなー。中井ちゃんはー?」
「國廣くんだよね?」
「そうそう! 國廣アキでーす! アキラちゃん、名前似てる同士宜しくね〜」
「中井さん、好きな食べ物とかある?」
「あれ、シカト?」