だが淳也は今戸叶と付き合っているはずだ。好きな奴は他にいるらしいが。悲しいがそれは俺のことではないので、この男がわざわざ俺のところへ来た理由が分からない。
「お前は淳也のことが恋愛感情で好きなのか?」
うわ、ずばっと訊いてきやがった。俺は視線に敵意を感じて、負けじと目を細くして生徒会長を睨んだ。そして、ああ、と答える。その答えは予想していたものだったらしく、確認するように頷いて、再び訊いてきた。
「淳也は、今付き合っている奴がいる。それは知ってるか?」
「ああ…」
戸叶のことか。俺はチッと舌打ちをして顔を逸らす。こいつ、何が目的なんだ? それを訊いて、何がしたい。
「お前はそいつから淳也を奪いたいと思うか?」
「は? ――…それは」
俺は驚いて生徒会長を見る。真剣な顔をして、俺をじっと見つめていた。
「……いや、俺は淳也が幸せならそれでいい、と思っている」
戸叶の奴はムカつくが。前から淳也のこと独占しやがって。でも淳也は戸叶じゃない、別の奴が好きなんだ。あんな切なそうな顔は見たくない。早く本当に好きな奴と結ばれてほしい。俺はそう思っている。まだ諦めきれてはいねえけど。
ピリピリとしていた空気は、ふっと緩む。生徒会長は安心したように息を吐いて、笑った。
「…そうか、ならいい」
「……は?」
「淳也がお前に会いたいっつーからな。人のモンに手ぇ出す野郎なら許さなかったが、そういうつもりじゃねえならいい」
「…人のモン、って。なんか、アンタが淳也の恋人みてーな言い方だな…」
ちょっと引きながら言うと、その瞬間生徒会長の顔がぐっと顰められて、怖い顔になった。
「あ? 恋人みてーだ? 俺は正真正銘淳也の恋人だ」
「はあ!? え!? 戸叶は!?」
「とっくに別れてる」
鼻で笑う生徒会長を信じられない思いで見つめる。……え、ちょっと待てよ。じゃあ、淳也の好きな奴ってこいつだったのか……!?
生徒会長は、俺を敵じゃないと分かったらしく、俺が呆然としている間にいなくなっていた。ついでに写真もなくなっていた。
数時間後、淳也から連絡がきて、何だか切なくなった。
fin.
幹「なんで俺に戸叶と別れて本命と付き合ったこと言わなかったんだよ!」
淳「あ、忘れてた、悪い」
幹「ガーン! 忘れてたって! おい!」
15/04/30
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