「どうした? 早く言えよ」
「うるせえ、黙ってろ」

 馬鹿にしたような顔で急かすクソ会長を睨むと、肩を竦められた。
 さて、次こそはと一度心の中で呼んで、口を開く。

「…なお、と」

 言った。言ってやった。しかし、クソ会長――直人は、不満そうな声を上げる。

「おい、目を見て言えよ」

 ――目を見たら言えそうになかったため、雑誌を凝視しながら呼んだのがお気に召さなかったらしい。別にいいだろーが。ちゃんと呼んだだろ。
 直人は溜息を吐いて起き上がると、ベッドを軽く叩いた。

「淳也、こっち来い」

 何企んでんだ。じっとりと睨むと、直人は鼻で笑った。「なんもしねえよ」本当かよと疑いつつ近づくと、腕を引っ張られ、気がついた時は直人の腕の中にいた。

「っな、なにす――」

 ぐいっと顎を上げられて目が合う。どきりとして固まると、直人はにやりと笑う。

「呼べるようになるまで、このままな」
「は!?」
「ちゃんと呼べなかったらお仕置き」
「はあ!?」

 「テメェ、何考えて――」暴れて腕から抜け出そうとしたが直人の体はびくともしない。くそ、と思っている俺の口に直人のそれが当たった。

「テメェじゃなくて、直人」

 こいつ、面倒くせえ!
 結局俺は、呼べるようになるまで解放されなかった。












fin.


どうしても名前を呼んでほしい会長の話でした!

15/04/28