「しかし…」

 実はメールの件と言うのは恋愛相談であった。淳也が翔太のことを好きではないと分かって、それならと相談に乗ってもらっている。淳也意外に聞かせることを恥ずかしくも感じているが、なにより紫炎は直人が翔太のことを好きだと思っているため、ここで話すのは、と思っている。
 ちらちらと淳也を窺っていると、淳也が溜息を吐いた。淳也が直人と付き合っていると露程も考えていないだろう。言うことでもないと黙っていたが、言っておけばこんな面倒なことにはならなかったかもしれない。淳也は後悔した。

「翔太のことだよ、相談に乗ってんだ。それだけ。な?」

 同意を求められた紫炎はぽかんと間抜け面を晒す。そして淳也に裏切られたことにショックを受ける。直人から馬鹿にされるか、翔太を諦めろと言われるか、とにかく何かされると思った紫炎は恐る恐る直人を見遣る。予想に反して、直人は怒りを引っ込め、口元に笑みを浮かべていた。安心したような表情に見え、紫炎は再びぽかんとする。

「んだよ、そんなことか。俺はてっきり早速浮気してんのかと」
「テメェと一緒にすんな」
「あ? ふざけんな。俺が浮気なんかするわけねえだろ」
「どうだかな。猿みてえに盛ってたじゃねえか」
「溜まるもんは仕方ねえだろ。それに、それは前の話だ。今はお前がいるからな。で、いつヤらせてくれんだよ」
「死ね」

 下品な会話を聞き流しながら、明はげんなりとした。他所でやれと言ってやりたい。一方、紫炎は石のように固まっていた。

「え…え? まさか、お二人は…」

 「死んだらお前困るだろ」淳也に向けて言ったあと、紫炎の言葉を拾って、にやりと笑う。