淳也が生徒会室に入った直後、むすっとした顔の直人と目が合った。

「あ、中村くん」

 紫炎がやってきた淳也を見て目を丸くする。その声に同時に紫炎の方を向いた二人だったが、すぐに顔を見合わせる。
 直人が徐に立ち上がる。淳也は少し顔を強張らせて直人をじっと見つめる。目の前までやってきた直人は、すっと携帯を差し出す。直人の謎の行動に眉を顰める。

「携帯を出せ」
「は?」

 淳也は振り向いて明に説明を求めた。しかし明は肩を竦めるだけで何も言わない。仕方なく顔を前に戻して、直人の言う通りにした。顰めっ面のまま携帯を取ると、操作をし始める。その間に、紫炎が声をかける。


「中村くん、こんにちは」
「ああ」
「さっきのメールのことですが…」

 淳也は見た。紫炎がメールのことを口にした瞬間、直人の目が鋭くなったのを。何に怒っているんだと呆れる淳也は、紫炎に続きを促す。

「ちょっとここでは話しにくいので、後で…」

 じゃあ何故今口にしたと明は心の中でつっこんだ。わざと怒らせているのかと勘違いするほど、紫炎は空気の読めない発言をする。淳也はとりあえず分かったと答えるが、淳也の彼氏である直人がそれを許さなかった。

「今話せよ」

 そこで初めて紫炎の顔が引き攣った。