俺と昔会ったことがあると言っても良かったが、こいつは覚えていなさそうだったし、すぐに言ってしまってはつまらない。覚えてねえってことにも腹立ったし。バラすのは後だ、と思っていた。
 中々中村と接触することができなかったが、あいつ――翔太が来たことできっかけができた。転入生が来ると知り、それが中村の同室者だと分かり、これを利用しようと思った。そして翔太に近づいたわけだが…。

「そうだ、翔太はどうしてる? 元気か?」
「は? 翔太? あー、まあ、元気だな」
「そうか、ならいい」

 安心して息を吐く。翔太には申し訳ないことをしてしまった。俺のせいでいろんな奴に妬まれていただろうし、俺が翔太に優しくしていたのは、中村を嫉妬させるためでもあった、もちろん嫉妬させるためだけではない。翔太は弟のようにかわいがっていた。しかしそれは絶対に中村へと向ける気持ちになることはない感情だった。だから正直複雑な思いだ。これで翔太が嫌なやつであればこの罪悪感も薄れるのだが。

「翔太とはちゃんとやっていけているか?」
「まあ……一応。お前のことはもう吹っ切れているとは言ってるけど…どうだかな」

 中村はぼんやりとした顔で呟いた。