「体が弱かった、って…」
「よく倒れて入院してたんだぜ、これでも」

 まじまじと見てくる中村に苦笑すると、中村ははっとして俺を指差した。

「もしかして……VIPルームの」

 どうやら、少しは記憶にあるらしかった。嬉しくなって口角を上げると頷く。中村は更に混乱した様子で何度も目を瞬かせている。

「え…でも、え? あの時と全然違うじゃねえか!」
「そりゃあな。いつの話だと思ってんだよ」

 中村と会ったのは小学生だ。しかもベッドにいる時間の方が長かったから、当然学校には行かず友達なんていなかった。話す奴なんていなくて、要するに根暗だった。ちなみに勉強は親が雇った家庭教師に教えてもらっていたが、必要最低限の会話しかしていない。

「あれはお前だったのか…」

 中村は宙を見上げる。俺も隣で同様にした。
 俺が初めて中村を見たのは、VIPルームの窓からだった。何気なく外に視線を遣った時だ。気の弱そうな男と気の強そうな男が二人で遊んでいた。最初は楽しそうに遊んでいる二人を冷めた目で見ていた俺だったが、何故か窓の外に目を遣ることが多くなった。