(side:淳也)

「俺に黙って行こうなんて、いい度胸だな」
「えっ、じゅ、淳ちゃん!?」

 校門の前で腕を組んで奴を待っていると、大きな荷物を持って現れた。横にいる芳名が苦笑する。

「え、何で淳ちゃんが…」
「芳名に聞いた。今日から休学だってな」
「よしちゃん!?」

 日向は目を見開いて芳名を見る。笑顔ですみませんと謝られ、がくりと肩を落とした。

「もー、黙って去って格好つけようと思ったのに」
「アホか」

 溜息を吐くと、すぐさま否定する言葉が飛んできた。

「…すぐ、戻って来いよ」
「うん」

 「待ってて、会長なんかより良い男になって戻ってくるから」日向は明るく笑って言った。あいかわらず太陽みたいな笑顔の奴だと思った。
 バスが来て、日向は名残惜しげに俺を見ると、不意打ちでキスをしてきた。
 驚いて固まる俺を置いて、日向はぶんぶんと手を振る。

「じゃあね!」
「お気をつけて」

 俺は小さく無理すんなよ、と呟く。横にいた芳名には聞こえたようで、くすりと笑われる。

「寂しいですね」
「ああ…」

 目を細めると、あ、という顔をする芳名。どうしたと訊こうとした時、バシッと頭に何かが当たった。

「いっ」
「お前、何キスされてんだよ」

 聞こえてきた声に後ろを向くと、クソ会長が不機嫌顔で俺を見ていた。

「な、なんでここに」

 クソ会長は俺の質問には答えず、鼻で笑った。