「淳ちゃん、会長と付き合ってないんだって?」

 何で知っているんだ。俺は芳名を見た。芳名は俺の視線に気づき、顔を上げて首を振った。芳名が言ったわけじゃないらしい。

「翔太くんに聞いたんだよ」

 おい、翔太…。俺は頭を抱えた。
 日向はそんな俺を見て笑う。そしてさらっと告げた。

「会長と付き合っていいよ、淳ちゃん」

 思考が一瞬停止して、は、と間抜けな声が口から漏れた。

「でね、俺、決めたんだ」
「……何を?」
「少しの間休学する」
「……は? 何言って――」

 呆然とする俺に、日向は笑いかける。

「いつまでも体弱いまま、淳ちゃんに守ってもらうような男じゃだめなんだ。もう淳ちゃんに迷惑をかけたくないんだ。淳ちゃんが惚れるような立派な男になって戻ってくるよ」

 「だから」日向はぎゅっと手を握りしめる。そしてにこりと笑った。

「今は会長と付き合ってていいよ。絶対、奪い返しにくるから」

 そう言う日向の顔は、今までで一番格好良かった。

「何も休学しなくても…」
「ここにいたら俺、淳ちゃん頼っちゃうし。会長とラブラブしてる淳ちゃんなんて見たくないし」
「ラブラブはねえよ…」
「それにね、淳ちゃんと次に会った時、びっくりさせたいから」

 日向は晴れやかな笑顔で言った。日向の頑張ろうとする気持ちを嬉しく思うと同時に、寂しくも感じた。