それから、数日が経った。実に平和な数日間だった。クソ会長とも会わず、日向とも会わず…。日向に関しては、芳名や空音から体調を教えてもらっているが。
 翔太は俺に、本当にいいのかと何度も訊ねてきた。お前こそいいのかと言うと、笑って頷いた。吹っ切れた笑みだったので、嘘ではないらしい。無理をして笑っている風でもなかった。
 俺は毎日学校へ行って、授業を受けて、翔太の食べるグロテスクな料理にツッコミを入れて。時々空音や副会長とも話をする。あいつらは相変わらず仲が悪いようだ。そして、クソ会長とは――会ってはいないが、目が会う時がある。あいつは目立つから見つけることは容易い。どっちかというと目立つ方かもしれないが、俺みたいな奴はごまんといる。しかし目が合うということはつまり向こうも俺を見つけるということで。それに喜んでしまう俺がいた。
 日向から部屋に来て欲しいと連絡を受けたのは更に数日後のこと。夕飯を食べた直後だった。久しぶりに会えるのは少し嬉しかったが、会いづらいという気持ちの方が大きい。俺は翔太に日向のところへ行くことを告げて、部屋を出た。














「ああ、来ましたか。どうぞ」

 俺を迎えたのは日向ではなく芳名だった。俺は頷いて、部屋に上がる。日向は紅茶を片手に、ソファに座っていた。俺を視界に入れると、へらりと笑う。突き刺すような痛みが俺を襲う。無理して笑っているのは明らかだった。

「淳ちゃん、久しぶり」
「……ああ」
「あのね、俺、淳ちゃんに話があって。時間大丈夫?」

 俺は無言で頷いた。ちらりと芳名を見ると、俯いていて表情が読めない。視線を日向に戻す。日向は真剣な顔をしていた。