起きたら瞼が若干重かった。子どものようにわんわんと泣いたわけではないが、ごしごしと目を擦ったのが悪かったらしい。もう一度寝ようと思ってベッドから出ないでいると、いきなり部屋の外が煩くなった。顔を顰めて布団に顔を埋める。次の瞬間、バン! と大きな音がした。

「テメェこのクソ犬! 何で俺んとこに来ねえ!」
「わああ会長、落ち着いてください!」

 ……うるせえな。

「帰れ」
「ああ!?」
「会長、あの、今日は…」

 キレているクソ会長を宥める翔太に申し訳なさを感じ、俺は渋々起き上がった。クソ会長を見ると、不機嫌面だったが、一瞬だけ目を丸くした。

「お前…泣いたか?」
「うっせえ」
「悪い、翔太。出て行ってくれるか」
「あ、はい…」

 クソ会長が翔太を追い出し、こっちへ近づいて来た。俺はふいっと顔を逸らす。

「戸叶に何かされたのか」
「されてねえよ」
「じゃ、振った罪悪感で、か?」

 俺は答えなかった。クソ会長は無言で俺の頭を撫でる。その優しい手に縋ってしまいそうで、俺はぎゅっと唇を噛んだ。

「久賀」
「何だ」

 俺は顔を上げる。自然と手は離れて行った。

「俺は…アンタが、好きだ」

 思いのほかするりと言葉が出てきた。クソ会長は目元を柔らかくして、嬉しそうに笑う。ずきりと胸が痛んだ。

「でも、付き合うことはできねえ」

 クソ会長が固まった。

「……は?」