(side:淳也)

 翌日、寂しそうな顔つきの幹太とおばさんに見送られ、俺は学園へと戻ってきた。幹太に相談したりクソ会長の愚痴を言ったりしたら幾分すっきりした。
 バスを降りて校門へ向かうと、誰か立っていた。すぐにその誰かの正体が分かり、俺はげんなりと肩を落とした。

「漸く帰って来たか」
「…んで、ここにいんだよ」
「どこにいようと俺の勝手だろ」

 クソ会長は鼻で笑い、近づいてくる。俺は奴を睨みながら、どうやってここを抜切り抜けるか考えを巡らせる。

「付いてこい、話がある」
「……先に部屋戻りてぇんだけど」

 ぼそりと呟くと、クソ会長は少し考えるような素振りをし、頷いた。「仕方ねえな」

「じゃ、さっさと行くぞ」

 俺の脚を蹴って急かすクソ会長の顔が一瞬、少し強張っているように見えて、俺は眉を顰める。もう一度ちゃんと見るが、いつも通りだった。……気のせいか。












「あ、おかえり――って、あれ、会長じゃないですか」

 翔太は本から顔を上げ、こっちを見た。俺の後ろを見て、目を丸くする。俺は後ろを振り向いた。よう、と片手を挙げるクソ会長の姿。

「何勝手に上がってんだよ」
「別にいいじゃねえか。……なあ、翔太?」

 翔太は苦笑する。「勿論、構いませんよ」俺は二人を交互に見て、違和感を覚える。何だか壁が出来たというか、ちょっとぎくしゃくしているように見える。

「おい、犬。お前の部屋どっちだ」

 ……まさか、俺の部屋で話をするつもりか。俺はちらりと翔太を見る。翔太はいつも通りだった。答えない俺の代わりに、右ですと答えた。って、おい。何教えてるんだと言う前にクソ会長が部屋のドアを開ける。そしてずかずかと部屋へ入っていく。俺は舌打ちをして、クソ会長の後に続く。ドアが閉まる音が響いた。