(side:幹太)

 淳也は知らないだろう。俺がどんなに今日と言う日を大切しているか。どんなに二人で遊べる日を待っていたか。

『俺淳ちゃんと付き合ってるから。信じられないなら淳ちゃんに訊くなりなんなりして確かめてみたら?』

 悪魔のようなあいつの声。そんなわけがないと思いながらも、あいつが妙に自信満々に言うから、慌てて淳也に訊いてみた。答えは、認めたくないものだった。否定はしていたが、顔が肯定を示していた。
 淳也曰く、恋愛感情ではない。それを聞いて、それなら俺にもまだ希望があるんじゃないかと思った。しかし、淳也の一言で再び地獄に落とされた。

「好きな奴がいる」

 話を聞くところによると、中々複雑な状態らしい。淳也が好きになる奴って、どんな奴何だ。そいつみたいになれば、こっちを見てくれるんじゃないかと、好きな奴について訊いてみる。一言、クソ野郎と帰って来た。
 ……クソ野郎って、なんでそんな奴を。そんな奴、止めろ。俺の方が絶対淳也を幸せにできる。しかし、そいつを思い浮かべているのか、頬を少し赤らめて笑う淳也を見て、何も言えなくなった。ずきりと胸が張り裂けるような痛みが俺を襲う。

「俺はあいつらに幸せになってもらいてーから、諦めるつもりだ。今はつらいけど、それはまあ、時間が解決してくれると思う。問題は日向だ」

 淳也は言った。好きでもないのに、日向と付き合うのは、日向に逃げるのは申し訳ない、と。俺は心の中で即座に否定する。あいつはただお前と付き合いたいだけだからむしろ喜んでるだろ。淳也が別れようと言ったって無駄だ。あいつは首を縦に振らない。戸叶の淳也への執着っぷりは、分かっている。淳也もきっと分かっているだろうし、なにより淳也が戸叶を見捨てきれないのは、あいつの体の所為だろう。

「お前はどうしたいんだよ」
「…俺は」

 どうしたいんだろうな。淳也は眉を下げて笑った。胸がぎゅっと締め付けられて、淳也を困らせると分かり切っているのに、俺は想いを伝えたくなって、口を開いた――。