「何言ってんだよ」俺は苦笑を幹太に向ける。しかし、幹太は訝しげな表情で俺と携帯を交互に見た。

「俺と日向が付き合ってるなんて、そんなわけ…」
「ないわけじゃないだろ。お前らの高校なら」

 俺は幹太の言葉に目を見開く。男同士で付き合っている奴が多いということを知っていたのか。

「戸叶はお前のこと前から好きだったしな」
「気付いてたのかよ」
「そりゃあ、まあ…」

 ぼそぼそと何かを呟いて、顔を赤くする。聞き返してみたが、幹太は赤い顔で首を振るだけで何も言わなかった。気持ち悪いとは思わないのかと訊いてみると、偏見なんてあるわけないと何故か胸を張って言われた。

「……お、お前っ、あいつのこと好きなのかよ」

 顔を赤くしていたかと思ったら、今度は泣きそうな顔をして俺に訊ねて来る。俺は数秒黙って、好きだと呟いた。ぐ、と幹太の手に力が入るのが見えた。

「そりゃあ、好きだ。でも、それは恋愛感情じゃねえ」
「え、……なんだ、じゃああいつの片想いかよ」

 ふん、と鼻で笑う。何だか勝ち誇ったような顔をしていて、さっきからころころ表情が変わるなと思った。

「でも、付き合ってるのは本当だ」
「…あ? え、は?」
「お前に聞いて欲しい話があんだ。…聞いてもらえるか?」

 幹太は頷いた。俺は、オレンジジュースを一口、ごくりと飲んで、口を開いた――。












「っつーことなんだけど……幹太?」

 幹太はショックを受けていた。そして壊れた機械のように何度も呟く。「淳也に好きな奴…好きな奴…好きな奴…」俺に好きな奴がいるのというのがそんなに嫌なのだろうか。

「……どんな奴、なんだ。…その好きな奴って」
「クソ野郎」
「は?」

 幹太はぽかんと間抜けな顔をする。クソ野郎だが、仕事はちゃんとするし、意外に優しい。脳裏に奴の顔を思い浮かべ、俺は口を緩めた。