(side:淳也)

「……い、おい、淳也!」

 誰かに肩を掴まれた。は、と我に返る。横を見れば、顰めっ面の幹太がいた。ぱくぱくと口を動かし、何かを言っているがその声は店内の音に掻き消されて届かない。俺は眉を寄せ、耳を幹太の口に近づける。何故か少し顔を赤くした幹太は俺から距離を取り、顔を歪めると俺の腕を取った。そしてどこかを指差す。その先を見ると、出口があった。外に出ようということだろう。俺は幹太に視線を戻し、頷いた。すると腕を引っ張られた。何で俺腕掴まれてんだろう。人は多いがいくらなんでもはぐれることはないし、迷子になるほどガキでもない。学園では見慣れた光景だが、普通は男同士でこんなことしないだろう。放せと声を張っても届いていないのか無視しているのか、幹太は振り向かない。今度は手を振って意思表示してみるが、今度も無駄だった。俺は仕方なく、そのまま付いて行くことにした。
 外に出ると、ぱっと手が放される。少し赤くなった手を一瞥して顔を上げる。幹太の顔を見てぎょっとした。幹太の顔は真っ赤だった。確かにもう夏だし、今日は蒸し暑い。しかしここまで赤くなるほどではない。

「大丈夫か?」
「は? な、何が?」

 顔が赤いのを指摘すると、ばっと顔を手で覆った。「こ、これはあれだ! えーっと、あれだ! そう、あれ!」あれってなんだよと思って、すぐに幹太が赤面症であることを思い出した。しかし俺以外の奴には普通らしいので、こいつ俺のこと好きなんじゃないのかと思う時がある。俺も毒されたな…。学園内なら兎も角、学園外だったら滅多にあることではない。

「あー…えーと、これからどうするよ。お前、行きたいとこあるか?」
「そうだな…。もう昼だし、どっか入らねえ?」

 一時間半ほどゲームセンターにいたようだ。時計を見れば、十二時を回っていた。俺の提案に、赤みがほとんど取れた顔で、幹太が頷いた。