気が付いたら、部屋にいた。
 「淳ちゃん、説明して」電話越しにそう言ってきた日向に、俺は視線を落とす。そして言った。「少し待ってくれ。ちゃんと言うから」
 その言葉に頷いた日向は、不満そうではあったが、俺が頼むと言うと、分かったと頷いた。






 翌日。俺はある男に会いに、外出届を出して学園から出た。
 ある男とは、幹太である。

「よう」

 待ち合わせ十分前。俺は既に集合場所にした喫茶店前に立っている幹太に近寄り、声をかける。携帯に向けられていた視線がぱっとこっちに向く。幹太は俺を見て目を瞬いた。

「淳也」
「おう、久しぶり」
「…早いな」
「つっても十分前だろ。つーか、お前の方が早いだろ」

 幹太はふいっとそっぽを向いて、慌てて再びこっちを見た。

「別に楽しみすぎて早く着いたとかじゃねーからな!」
「そうか」

 あー、懐かしいな、この感じ。俺は顔を緩める。幹太は顔を赤くし、何笑ってんだと眉を吊り上げた。
 今日が休日で良かった。平日だったらクソ会長に合うかもしれないし、翔太にも日向にも会いたくない。部屋でじっとしているとうじうじ考えてしまうので、こうして出てきたわけだ。幹太には都合が合えば会いたいと思っていた。いきなり電話して明日空いているかと訊いて来た俺に付き合ってくれている。

「あいつはいねーんだよな」
「日向はいねーよ」

 きょろきょろと周りを見る幹太に苦笑を浮かべる。すると、幹太は目を丸くした。何だ?

「…お前、あいつのこと名前で呼んでたか?」
「あー、まあ、いろいろあってな。呼ぶことになったんだよ」
「ふーん」

 面白くなさそうな顔をした幹太だったが、すぐに笑みを浮かべる。

「じゃ、行こうぜ」
「ああ」

 とは言っても。誘っておいてなんだが、どこに行こうかなんて決めていない。俺たちは左右を見回しながら歩いて行く。幹太の愚痴を聞いて相槌を入れていると、ゲームセンターを発見した。

「入るか」

 俺の言葉に幹太が頷き、足を踏み入れる。騒音が俺たちを迎えた。