中はそこそこ広かったが、思ったより質素だった。外観があれだけ豪華だったんだから、てっきり室内もそうだと思っていたのに。

「そこ、座れ」

 指で指されたソファに無言で座る。そして周りをじろじろと見ていると、クソ会長は何かを持ってきた。俺はぎょっとしてそれを見る。折りたたみチェアだったからだ。それを広げ、座って足を組む奴を唖然と眺める。視線に気づいたクソ会長が何だよと言いながら眉を顰める。

「…何で、その椅子…」
「ソファは今お前が座ってるものしかねえからな」
「持ち込めばいいじゃねえか」
「俺一人だからいいんだよ」

 俺一人? ……ここは、役員専用の建物だったんじゃないのか?
 俺の疑問を悟ったらしく、クソ会長は宙を見ながら言った。

「一人になれる場所が欲しかったんでな」
「……自分の部屋があるじゃねえか」
「部屋は……」

 クソ会長は言葉を切ると、立ち上がって頭を掻いた。そして、別にいいだろと話を逸らすと、どこかへ行く。背を追っていくと、小型冷蔵庫を開けて、ペットボトルを取り出す。そして棚からコップを二つ。そこで俺は、再び驚いた。あのクソ会長がお茶を用意している…!?

「ほらよ」
「……どうも」

 気の抜けた声で礼を言って、コップを受け取る。嬉しいというか、何だか気持ちが悪い。何か企んでいるのか? 俺は探るようにクソ会長を睨む。クソ会長は笑った。「何も入ってねえよ」

「一人になりたいときに、ここに来るのか?」
「あ? ああ、まあな」
「じゃあ、何で……」

 ここに俺を連れてきたんだよ。俺は最後まで言えず、顔を逸らした。はっきりとした答えを聞くのが怖かった。俺はお茶を飲んで、じっとそれを見つめる。

「……話って、なんだよ」
「もう少しゆっくりしてからでいいだろ、話は」
「だから、俺は授業が…」
「うるせ」

 ぎろりと睨まれ、俺は舌打ちする。当分解放してくれなさそうだ。
 俺は仕方なく再びお茶を飲んで、溜息を吐く。