数日経った。吉貴は相変わらず冷めていて、俺も相変わらず吉貴の料理を食べては吐いていた。しかし最初よりは食べられるようになっていて、全部食べられるようになる日は近い…と思う。
 ソファに横になってだらだらと過ごしていたら、吉貴が鞄を肩にかけ、部屋から出てきた。まだ買い物に行く時間ではないし、行くときにいつも持っていく”えこばっく”という袋を持っていない。

「……あ? 何だ、どこか行くのかよ」

 数日の内に吉貴との空気にもすっかり慣れ、話しかけたり一緒にいたりすることも多くなった。吉貴は俺を一瞥して、鞄をかけなおす。


「ちょっと行くところがあるんだよ」

 行くところ? 俺は体を起こして、眉を顰める。

「どこだよ」
「…なんでテメェに言わなきゃなんねえんだ」
「言えねえ理由でもあるのかよ」

 吉貴は面倒臭そうに俺を見て、溜息を吐いた。そして肩を竦めて一言呟いた。「お前の親父だよ」

「はっ? 親父?」

 ……え? 親父? 何で親父が吉貴を呼び出すんだよ。俺に何も言わずに。
 頭にハテナを浮かべていると、吉貴はそのまま部屋を出ようとする。俺は慌てて立ち上がった。

「おいおいおい! ちょっと待て!」
「……何だよ」
「何だよじゃねえ! 親父がお前に何の用だ!?」
「知らねえ」

 本当は知ってるんじゃねえかと探るように見たが、本当に知らなそうだった。もしかして学校のことなんじゃないかと思ったが、それなら吉貴だけを呼び出すのはおかしい。というか、俺に関することだったら、俺も呼ばれているか、ここに来るだろう。ということは。吉貴だけに関することなのか…?


14/10/18