「そっかあ、そっかあ。ありがとねーたぐっち」
「え……え、あれ?」

 田口の答えを聞いた世津が満足そうに笑う。田口は戸惑ったような声を上げて、恐る恐るといった動作で俺を見た。ギロリと睨みつけてやれば、田口の顔がさっと青くなる。白木と一緒にいたのが俺だと分かったことで面倒なことになったらお前のせいだぞ。
 嫌な気分になりながら、課題のプリントを取り出す。昨日数学教師が置いて行ったものだ。はっきり言ってレベルが低い問題ばかりだが、やらないよりはましだ。

「うっわ、真面目ちゃんだねえ」

 馬鹿にしたような笑みを浮かべる世津にまあなと返して、問題に取り掛かる。こういうやつは相手にすればするほど構ってくる。無視が一番だ。

「お前らも社を見習って、少しはやっとけよ」

 教卓に座っていた柳原がいつの間にか俺の席の前にいた。手を止めて顔を上げると、にいっと笑った柳原が俺の髪をわしゃわしゃと撫でる。びっくりして固まっていると、机の上にプリントが置かれた。……ん? 問題がぎっしり書かれているプリントを一瞥して、顔を上げると非常にいい顔で笑っている柳原。

「問題が簡単すぎて飽き飽きしているだろうお前に、プレゼントだ」

 そして、名簿を持つと、さっさと出て行ってしまった。
 ……いや、確かに。確かにな、俺はこいつらがやるような問題は低レベルだとは言った。だが……。量多すぎるだろこれ!
 プリントのタワーを見て蟀谷を押さえていると、隣からブハッと噴く出す音が聞こえた。

14/07/01