「お前さ、危機感なさすぎんだろ」

 呆れたように言う田口に、俺は素直に悪かったと謝った。

「お前は嫌かもしんねえけど、ちゃんと言ってくれよ。俺、お前が傷つけられんのとか、嫌だし」
「田口…」

 真っ直ぐに俺を見つめてくる田口にじんわりと胸が温かくなる。

「さんきゅ」

 顔を緩めると、田口もに、と笑った。

「さて、たいぶ遅刻したけど行くか」

 そして俺たちは立ち上がった。












「ああ、来たか」

 ドアを開けると、柳原が教卓に座っていた。そこは座る場所じゃないだろと思いながら、頭を小さく下げる。

「すみません、遅れました」
「おう、いい、いい。席着け」

 言われた通り席に着くと、ニヤニヤした顔がこっちに向く。

「寝坊かあ?」

銀髪――白木と一緒にいたなんて言ったら、どうなるか分からない。適当に話を合わせることにした。

「……まあ」
「ふうん?」

 峯岸は目をすっと細めて、興味を失ったように俺から視線を外した。

「ええ〜? じゃあ、朝のあれは社クンじゃなかったんだぁ」

 朝のあれ…? 話に割り込んできた世津に眉を顰める。

「俺の知り合いがさぁ、あの白木と仲良さげに歩いている奴がいたって言うんでね。社クンかなーって思ってたんだけど」

 世津が嫌らしい笑みを浮かべる。仲良さげかはともかく、それはおそらく俺だ。
否定しようとした時、峯岸が反応した。

「へえ、白木とねえ?」

 ちらりと俺を見る。鋭いその視線に汗がたらりと流れた。