静かだ…。揺れる葉っぱを見ながら思った。なんだか眠くなってくるなと思いながら、さっきから無言の銀髪を見る。

「寝てるし…」

 つーか俺も眠い。段々重くなる瞼。寝まいと何度か頭を振ったが、俺の抵抗虚しく、意識は遠のいていった。少しだけ…、少しだけだ。意識が落ちる直前で、そう思った。















「ん……」

 ふ、と意識が浮上する。目を開けてぼおっと宙を見る。焦点が合わなくて、ぼやけた景色が目に入った。

「起きたか」
「っ!?」

 耳元で聞こえた声に驚いて目を見開いたまま硬直する。誰かの肩に凭れ掛かって寝てしまっていたようだ。慌てて体を起こした。

「わ、悪い」
「いや」

 俺が凭れ掛かっていた相手――銀髪は、一度肩を回して、ふあ、と欠伸をした。そして俺を横目で見ながら言った。「良く寝てたな」

「……え、今何時だ?」
「知らねえ」

 俺はポケットを探る。スマホは…持ってきていない。やっちまったと溜息を吐くと、立ち上がった。それを見つめる銀髪。まだ眠いのか、半目だ。

「俺、もう行くから」
「…あ? ああ、そう」

 じゃあと言おうとすると、何故か銀髪も立ち上がる。それを不思議に思って見ていると、銀髪が隣に立った。無表情の銀髪。それを見る俺。銀髪は動かない。

「? 行かないのか」

 銀髪の方から問われてしまった。俺は首を振って、歩き出す。それに合わせて銀髪も動いた。……一緒に行くつもりだったのか。まだ眠そうだし、ここで寝ていればいいのにと思っていると、銀髪が言った。「この時間、危ねえ奴もうろついてるから、俺が守ってやるよ」

「…どうも」

 なんだか男としてのプライドが傷つけられた気がしなくもないが、不良相手に無力なのは事実なので、顔を引き攣らせながら礼を言った。