(No side)

「俺は生徒会がどうなってもいいけど」

 吐き捨てるように言う誠春は、確かにまったく興味がなさそうだった。ちらりと本棚に目を遣り、数冊本を手に取ると、踵を返す。もう生徒会長――邦平真斗には興味がないようだ。邦平はおいと引き留めようとしたが、誠春が振り返ることはなかった。
 邦平は当初の目的も忘れ、胸糞悪い思いをしながら図書館を後にした。
 歩を進めながら、邦平は誠春の言っていたことを思い出していた。仕事をしていない自覚はあったし、しなければいけないとも思っている。だが、中々戻れないでいた。それには、邦平のプライドが邪魔していた。それだけではない。むしろ、もう一つの理由が邦平を戻れなくしていた。誠春の居場所を奪い取った、転入生こと千聖である。少しでも邦平が仕事の話をしようものなら、千聖は態度を一変させた。表情を無くして、じっと見つめる。まるで裏切るのかと言っているような視線。さらに、裏切り者はいらないと言う風に他の親衛隊持ちの方へ行ってしまう。そして、結局邦平は負けてしまうのだ。惚れた弱み――いや、それはもう脅迫に近かった。
 しかしと思う。何故今仕事をしているのが戸田ということを知っているのだろう。邦平は生意気そうな顔立ちの男を脳裏に浮かべて顔を顰めた。サボり魔である戸田が仕事をしているのは想像がつかないが、確かに戸田は千聖の周りをうろついて取り合わなくなった。Zクラスである誠春がそれを知っているとは考え難い。だから尚更分からないのだ。

「……待てよ」

 まさか。邦平は立ち止まって呟いた。そして早足である場所へと向かった。














 久しく訪れていなかった階へ足を踏み入れる。周りには誰一人としていない。邦平は逸る気持ちを抑えながら生徒会室のドアを開いた。

「か、会長様!?」
「え!?」

 驚く声を無視して、邦平は目的のデスクへと足を運んだ。綺麗に片付かれたそれをじっと見つめると、舌打ちをして振り返った。そこには、目を見開いた井出原と戸田がいた。