あっという間に昼休みになった。今日見た教師と言えば榊原くらいで、ほとんど自習の時間だった。別にそれはそれでいいのだが、試験はどうなるんだろうか。
 参考書を片付けていると、田口が昼飯に誘ってきた。

「今日は無理だ」
「あ? なんでだよ」

 むっとした田口は続けた。「じゃあ俺に一人で食えって言うのかよ」…お前は俺以外に友達がいないのか? って、それは俺もか…。

「図書館に行くんだよ」
「としょかん?」

 田口はきょとんとした。

「図書館とか行ったことねーぞ、俺」

 驚きはしなかった。そうだろうなと思っていたからな。むしろ、良く行くと言われた方が驚く。

「そういうことで、俺は行くから今日は一人で食えよ」
「…俺も行く」
「は?」

 踵を返した俺は、田口に言葉に振り返って眉を顰めた。

「そんなに一人が嫌なのかよ」
「そういうわけじゃねーよ! 図書館って一度行ってみたかったからよ」

 田口の引き攣った笑みをじとりと睨むように見て、俺は溜息を吐いた。













「言っとくが、少しでも煩くしたら追い出すからな」
「わ、わかってるっつーの」

 田口の図書館に行ってみたいという嘘は分かったが、こいつがどういうつもりで付いて来たのか分からない。俺を一人にしたくなかったのかそれともやはり一人で食べるのが嫌だったのか…。可能性はほかにもある。……まあ、いいか。
 再度田口に静かにするよう告げて、俺は目的の本棚へと向かう。以前はよくここに来ていた。くそ野郎どもが仕事をしなくなるまでは…な。嫌なことを思い出し、少しだけ顔を顰めた俺は、本棚の前にいる男を見てさらに歪めた。男は視線に気づいたのか、こっちを向いて――視線が合うと、男は瞠目した。

「……やしろ?」

 俺は静かに舌打ちをした。