興奮している諸星に引くが、奴は俺の様子にまったく気づかず、肩まで掴んできた。いてえな、この馬鹿力。

「お前の誕生日パーティの時に、会ったことがあんだよ」
「…お前と?」
「三年前だ」

 俺は三年前のことを思いだそうとした。しかし、こいつと会った記憶はない。俺は眉を顰めて諸星を見た。

「…会ったか?」

 諸星は残念そうな顔をして肩を落とした。力が緩んだので肩に置かれた手を払い落とす。そんな顔されても、覚えてねえもんは覚えてねえんだよ。恐らくよっぽど興味がなかったんだな。じゃなきゃ一応良家の息子の顔と名前を忘れるわけがない。こいつが長男じゃねえってことも理由の一つだな。

「まあ、あんときとは大分ちげーし、仕方ねえか…。つーか、テメェはいつまでここにいんだよ」
「え?」

 いきなり話を振られた戸田が目を丸くする。そういえばいたな。あまりにも静かだから忘れていた。

「俺がいちゃ駄目なわけー?」
「存在がウゼェ」
「あっ、そうだ、マサ、メール返事ありがとう」
「あ? ああ…」
「シカトかよ」

 メールってなんのことだと思ったが、あれか。あのギャップ感じるやつ。

「お前意外にちゃんとした文章書くんだな」

 つか、わざわざ返事ありがとうとかいうやつってのも意外だ。こいつ、疲れすぎて性格変わってるんじゃないだろうか。
 俺の言葉に、戸田は照れたように頬を掻いた。俺はそれを一瞥し、再びお握りを物色する。遅くなったら食べる時間がなくなるし田口が煩い。早く買って帰ろう。こいつらも面倒だしな。