「いらっしゃい」

 コンビニに着くと、花平さんが笑顔で俺たちを迎えた。ああ、癒される。花平さんは俺の隣にいる人物を見て一瞬目を丸くし、ふんわりと笑った。

「なんだ、やっぱり仲良いんじゃない」
「どう見たらそう思えるんですか…。俺はこいつと仲良くなんかしたくありません」

 げんなりして言うと、後ろで諸星がぼやいた。「んなこと本人の前ではっきり言うなよ…」うるせえ。事実だろ。
 とにかく、これで諸星とは別行動だ。俺は奴に背を向けて、棚に向かって歩き出す。

「あ、おい」

 諸星の声を無視してお握りコーナーへ行くと、なぜか諸星もついてきて、隣に並んだ。俺は横目で諸星を睨む。

「何か言いてえことあるなら言えよ」
「あー…いや、その」

 諸星は眉間に皺を刻んで、宙に視線を遣った。中々言い出さないので痺れを切らして口を開いた時。

「あれ!? やし――じゃなくて、マサ!?」

 げ!
 厄介な人物が登場してきてしまって、俺は顔を顰めた。近寄ってきた奴――戸田は、俺を見て顔を緩めるが、すぐに諸星に気付いて硬直する。

「え、…え!? なんで諸星が!?」
「テメェこそ…」

 二人は一斉に俺を見る。うわ、これ説明すんの面倒だな…。俺は溜息を吐いた。無視だ無視。

「――ん? つか、さっきこいつのこと、マサって呼んでなかったか?」
「え? まあ…うん」

 諸星は顎に手を当てて何かを考え込む。そして、はっとした顔で俺を見た。

「お前…まさか、八代誠春か!?」

 言われた言葉に、何を今更――と思って、いや待てと不審に思った。俺はこいつに自分の名を言っていないよな…? 確かに社と八代、誠晴と定春で推測できる要素は十分あるが、まさかこいつが八代家のことを知っているとは思わなかった。

「だから見覚えがあったのか…おい、俺のこと、覚えてねえか!?」

 …は?