こいつに何言っても返してもらえないだろうな。俺は諦めて、奴らに背を向けた。

「あ、おい、どこ行くんだよ」
「部屋だよ、部屋」
「社クンの部屋って、なーんにもなさそうだよねえ。社クンと同じで」
「おい、やめろよ、世津」

 俺は振り向いた。世津は、馬鹿にしたような笑みで俺を見ていた。俺はふんと鼻で笑う。

「そうだな」

 俺は再び背を向け、今度こそ部屋へと向かった。後ろで世津のがっかりした「つまんねー」という声が聞こえた。

















 用意を済ませて部屋を出ると、世津の姿はなかった。俺は未だに寝間着姿の田口に声をかける。

「田口」
「んあ?」

 スマホを触っていた田口が顔を上げる。俺はドアを指差しながら言った。「朝食買ってくる。何がいい?」

「え? あれ、今日って俺じゃなかったけ」
「少し歩きたいからな。ついでに買ってくる」
「あー…悪いな。まあ、適当でいいや」
「そういうのが一番困るんだよ。……後で文句言うなよ?」
「おー」

 田口がひらひらと手を振る。俺ははあと息を吐いて、部屋を出た。






「よ、よう」
「……出待ちかよ…」

ドアを開けた瞬間見えた顔に、げんなりする。なんでこいつがここにいるんだ。

「偶然だな」
「……偶然には思えねえんだけど」

 ドアの前に立って待っていたくせに、よく偶然だなんて言えたもんだ。俺は諸星を睨んだ後、そのまま無言で間を通ろうとした。しかしそれは諸星によって防がれる。

「あー……っと、今からコンビニだよな?」
「どこだっていいだろ」
「俺もコンビニ行くんだよ。目的地同じなんだから一緒に行っても構わねえよな?」

 俺は舌打ちした。そして吐き捨てる。「勝手にしろ」
 諸星は俺の言葉に安堵したような顔を見せた。世津や峯岸も訳が分からないが、こいつもこいつで分からない。何がしてえんだ。なんで俺に関わろうとする。俺は諸星を一瞥した。…少し疲れの見える顔だ。転入生のことで色々あるのかもな。まあ俺には関係ねえことだが、ちょっとだけ同情する。