俺はすぐさま答えた。

「分かんねえ」
「は?」
「だから分かんねえんだよ」

 少し苛立ちながらもう一度言うと、吉貴は訝しげな顔で俺を見た。

「変な奴だな」
「あ!? お前に言われたくねえよ!」

 吉貴は心外だとばかりに肩を竦めた。そして再び目を閉じる。お、眠るのか。じろじろと観察していると、深かった皺が更に深くなり、カッと目が開かれる。

「うおっ! びっくりした」
「びっくりしたじゃねーよ! どっか行け」
「別にいいじゃねーか」
「良くねえよ」

 深い溜息を吐いて、起き上がる。どうやら眠るのはやめたらしい。そして立ち上がると、どこかへ向かう。俺は思わずその背中に声をかけた。

「おい、どこに行くんだ?」

 ぴたりと立ち止まる。そして振り向かずに言った。

「……部屋だよ」

 そのまますたすたと歩いて行く背中を見送り、俺は何気なくソファを見た。
 家のソファはずっと使っていたし、家の奴らしか座ってなかったから抵抗なく座ることができていた。……じゃあ、これは?
 俺は恐る恐るソファに手を伸ばす。触れる直前に吉貴が寝転がっている姿を思い出し、手を引っ込めた。
















「やあ」
「……なんでいるんだよ、親父」

 寝起きに不機嫌顔の吉貴にすぐに来いと言われ、行ったリビングには親父がにこにこと笑って座っていた。
 ……様子でも見に来たか? いや、でも嫌な予感しかしない。

「やあ、実はね、二人に行ってもらいたい場所があるんだ」
「……はあ」

 吉貴は溜息を吐くように返事をして、ちらりと俺を見た。どういうことだと目が訴えかけている。俺は知らないぞ。首を振って否定した。