(side:淳也)





 副会長からの電話を受けた後、暫く空を見上げながら煙草を吸った。しかし途中で雨が降ってきた為、仕方なく屋上を後にする。今更教室に行くのもなんだと思って、そのまま寮に戻った。
 副会長から再び電話がかかってきたのは、風呂上りでごろごろしている時だった。翔太は風呂に入っている。俺は携帯を手に取りテレビを消して自室へ入った。ベッドに腰掛けてボタンを押す。
 もしもし、と言うと、何だか疲れたような声で返された。どうしたんだ? そう考えて、空音の顔を思い出す。あの後あいつは生徒会室に戻ったはずだ。空音に何か言われたのかもしれないな…。

『ごめんね、遅くなって』
「いや。忙しい時に悪ぃな」

 俺は壁に掛かっている時計を見る。八時半。今まで仕事だったのか。何だか申し訳なくなって謝る。

『僕が今までサボってきたツケが回ってきたんだ。中村くんが謝ることはないよ』

 ……真面目だなこいつ。
 何で翔太に惚れてあそこまでなったのか分からない。

『それで、何かな?』
「あー…えーと…」

 うっ。いざ言うとなると少し緊張すんな。

「アンタって、まだ翔太のこと、好きか?」
『……え?』

 俺がそんなことを訊くとは思わなかったのだろう、副会長の声は不思議そうだった。そして沈黙。

『…好きだよ。まあ、前ほど盲目的になってないけどね』

 そうだなと答える前に、副会長が言葉を発す。

『でも、付き合いたいとか…そういうのはいいんだ。だって、あの子には好きな人がいるから』

 ドキリとする。……知ってたのか。
 少し切なそうな声に俺は眉を顰めた。今のは、つまり、諦めるってこと…だよな。

「そうか、分かった。…訊きたいのはそれだけだ」
『えっと、何でいきなりそんなことを…?』
「いや、好きな奴が他の奴を好きだった時はどうするのがいいのか、意見が聞きたくてな」
『……っ』

 息を飲む音がした。そして静かなまま数秒が経つ。俺はおい、と向こうに呼びかけた。

『ご、ごめん。そうか、君も翔太くんが…! あの、えっと、さっきのは…えーと、うん、僕は中村くんを応援するよ!』
「へ」

 ……えーと…?
 何か勘違いしてんな。いや、確かにちょっと前までは翔太が好きだったけど。他の奴の可能性を考えないのか。
 まあ、…クソ会長だけは絶対思わないだろうな。俺だって有り得ないと思っている。なんであんな奴を。大体、俺とクソ会長が、そ、そういう感じの雰囲気とか…絶対キモい。