『空音からメアド聞きました。少し訊きたいことがあるんで連絡ください。番号は――』

 僕はぽかんと口を開けて文面を見つめる。な、なんということだ! 彼の性格と見た目からは予想できなかった礼儀正しさ! これがギャップ萌えというものか。僕の顔が気持ち悪かったのだろうか、会長が訝しげな顔で僕を見ていた。僕は直ぐに何でもないように笑みを浮かべた。すると、会長の眉間に新しい皺が刻まれる。

「おい…」

 会長が何かを言いかけた時、生徒会室のドアが開いた。入ってくるのは憮然とした表情の空音だ。空音は携帯を持ったままの僕を見ると、不愉快そうに顔を歪めた。どうやら僕が中村くんからメールを貰ったのを知っているらしい。…まあ、そりゃそうか。空音がアドレスを教えたんだものね。僕が何度訊いても教えてくれなかったのに急にどうしたんだろう。そこまで考えて、メールの内容を見る。…少し訊きたいこと、ってなんだろう。というか、これってつまり、中村くんが「僕」に何かを訊きたいってことだよね。空音でもなく、翔太くんでもなく。内容は分からないけど、なんだろう、優越感だ…。ふふふと笑いながら空音を見ると醜いものでも見たかのような顔になった。空音に嫌われてるのは分かる。嫌われるようなことをした自覚もある。けれど、さすがの僕でも傷つくことだってあるんだよ、空音…。
 空音は僕から視線を外すと、自分の席に座った。大きな溜息とともに。

「チッ」

 ん?
 聞こえたのは空音の方からではない。会長の方からだ。会長は僕たちのことなんか視界にも入れず、相変わらず機嫌の悪そうな顔で手元を見ていた。あ。そういえば、先程何かを言いかけていたな。なんだったんだろう? もしかしたら空音が来るのが遅かったから、空音のことだったんだろうか? …うーん、分からない。会長の考えていることは僕にはさっぱりだ。翔太くんには優しいけど、それが恋愛感情なのか、今でもよくわからないし…。