(side:淳也)

 携帯が枕元でくぐもった音を発したのと、僅かな振動で意識が浮上した。ぼおっとしながら起き上がり、ああ、寝ていたのかと思った。
 鳴り終わった携帯を手に取って、嫌な予感がして開けるのを躊躇する。暫し迷ってから、携帯を開けた。――日向からだ。ぎくりと体が硬直する。携帯の上の方に表示されている時間を見て、今が昼だということが分かり、納得する。何かあったのだろうかと慌てて開く。そしてそこに書いてあった文章に目を丸くする。

『食堂に来てね(ハート)』

 ……。………は?
 食堂…? 何言ってんだ、こいつ。
 俺はメールを閉じ、アドレス帳から日向の電話番号を探して着信した。

『はあい』
「…お前、今どこにいるんだ」
『食堂にいるけど〜? 早く淳ちゃん来てよ。俺お腹空いた』
「……何で食堂なんだよ。お前、わかってんのか? 俺と一緒のところを見られたら――」
『早く来ないと、俺と淳ちゃんが付き合ってるって言って回るからね』

 ブチッと電話が切れる。俺は携帯を耳に当てたまま呆然とする。な、なんだって…?
 色んな意味でさあっと青くなると、俺は慌てて部屋を出た。


















「あっ、淳ちゃん! ここだよー」

 日向がにこにこと笑いながら俺を迎えた。俺は額を手で覆う。こいつ、やりやがった。日向とひっそりと食事を摂ればいいかと考えていたのに。大声を出されたらどうしようもないじゃねえか。

「日向…お前」
「…淳ちゃん、ごめんね」

 眉を下げて謝る日向に胸が痛んだ。俺は溜息を吐いて、席を指差す。

「なるべく、目立たない席に行くぞ。いいな?」
「うっ、うん!」

 ぱあっと顔を輝かせる日向。思わず苦笑が零れて、ハッとする。周りのやつらが興味深そうに俺たちを見ている。舌打ちをすると、日向を一瞥して席に向かう。日向も俺の後を付いて来た。

「日向、体調悪くねえか?」
「うん、大丈夫!」
「そうか」

 肩ごしに振り返って顔を見る。見たところ顔色も悪くない。ホッとしながら椅子の背に手を掛けた。