俺は自分の名前が書かれた部屋を見て口をあんぐり開ける。おどろおどろしい雰囲気なのは変わらない…が。ドアが異様に大きい。普通の開き戸とかじゃなくて…両開きで、しかも色々な装飾が施されている。これ魔王様の部屋じゃねーのかと思うが、真ん中に大きくATSUHIROと書かれている。お、俺の名前知ってたんだ魔王様…感激。
 俺は先程訪れた勇者の部屋を思い出す。普通の開き戸に、普通の部屋。扉には平仮名でゆうしゃと書かれていた。この差は一体。いや、勇者はまあ敵だから仕方ないとする。でも、俺は何だ。ただの下っ端だ。この優遇っぷりはおかしい。
 ……それとも、これが普通、なのか? 魔王様の部屋はこれの三倍くらいあるのか?

「とりあえず入るか…」

 髑髏の取手を引く。け、結構重い。まあ重いだろうとは思ったけど。
 そして中を見て再び絶句。天蓋付きベッドとか……え、は、初めて見た。しかも部屋が広い。上に色々揃ってる。

「いやいやいやいや」

 これ確実におかしい! 俺の部屋じゃなくて魔王様のだろ絶対!

「どうした?」
「ひぶぁ!」

 へ、変な声出た。
 勢い良く振り返ると、不思議そうな魔王様の麗しいお姿。ああ、何度見ても格好いい。服の下とか筋肉凄いんだろうなぁ…じゃなくて!

「まままま魔王様この部屋…!」
「あぁ、気に入ってくれたか?」
「エッ」

 ……え?

「ああああああのっ、この部屋って…」

 俺の部屋ですか。
 そう訊ねると、何を言ってるんだというような顔で頷かれた。
 ワオ。

「そっそんな、俺なんかにこの部屋はもったいないです…!」
「気に入らなかったか?」
「え、いや、あの」
「気に入らなかったのかと訊いてる」
「き、気に入らないわけないじゃないですか!」
「じゃあいい」

 満足そうに笑うと、俺に背を向けた。
 え、あ、あれ…? 流された…?
 俺はがっくりと項垂れた。