「は? 金? ねえよ」

 うん。前言撤回しよう。こいつ、友達なんかじゃねえ。
 帰って来て直ぐに金を出せと言うと物凄く嫌そうな顔ではっきり告げられ、俺の頬の筋肉がぴくぴくと震えた。

「ゲッ。甘いモンばっかじゃねえか」

 おまけにこのセリフ。

「……じゃあ俺が食べる」
「馬鹿言うな。これ、俺のだし」
「はっ? だって甘いモン嫌だって…」
「…食えねえこともない」

 何だよお前、ツンデレってやつか? これが女の子だったら可愛いんだろうけど、男の、しかもこんなデカい奴にツンデレやられても…。

「…てか、明日の昼飯抜きかよ…」

 ズーンと思い空気を背負って呟くと、勇者がそういえば、と片眉を上げた。

「お前、大学生?」
「え…いや、高一だけど」
「高一!?」

 えっ。何その反応!?
 ま、まさか…俺、そんなに老け顔…?

「てっきり俺と同い年かと…年下かよ」
「お前こそ幾つだよ」
「俺は今年で二十歳だ」

 うわ、大人。…でも、確かにそれくらいっぽい雰囲気してる。

「しゃあねえなぁ…。ほら、オニーサマがガキのお前にお小遣いやるよ」

 カチン。
 言い返しそうになって、慌てて口を閉じる。やっぱりやらないと言われたらたまったもんじゃない。ここは大人しく受け取ろう。大人の対応ってやつだ、うん。

「…どーも」

 きっとブス腐れた顔だったんだろう。勇者は面白そうに俺の顔を見ながら、財布からお札を取り出した。そしてそれを俺の手の平に置く。千円札が……二枚?

「えっ、こ、こんなにいらねえよ!」
「いいから貰っとけ」

 勇者はニッと笑う。

「……あ、ありがとう」
「おー」

 欠伸を噛み締めた。まだ眠いらしい。ていうかもう目閉じてる。
 俺は二千円を財布に入れて、その場を後にした。